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妖狐・鏡
『 鏡に逢うか? 』
玉婆が俺らを祠に案内してくれるという。
喜んでいるのは影妖狐姿の充子さんだった。
自分の先祖に興味があるようだ。
もわっとした結界を抜け、薄暗い祠に入る。
歩くとシャリンシャリンと足下で不思議な音がする。
妖の亡骸で特別に作られた泣き石である。
本堂にまで響くので侵入者が入れば皆に伝わる。
もちろん入り口にも結界があり、許可されない者は弾き飛ばされる。
俺も祠に入るのは初めてだ。
奥まで行くと石の台座が有り、そこに白い狐の姿をした鏡が胎児のように丸くなっていて眠っている。
台座の周りにも薄い結界が張られている。
「起こすのは充子さんが離れる時が良いんじゃない?」
晴明がまともな事を切り出す。
『そうじゃな。鏡が起きるかわからんが……』
『では、一年後にまたこようよ。良いかな?』
玉婆が剛志君に訊くと、彼は首をコクコクと縦に動かした。
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