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化け猫の転生恩返し 外伝  作者: 日向彼方
第壱章
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妖狐・玉

「今週末、時間あるならうちの実家来る?」

まだ剛志君は怒っている?

「なぜカメラ倶楽部?」と散々訊かれた。

彼はミステリー倶楽部に登録したらしい。

「同じ教室だからいいだろ。うちは家庭の事情があるんだ」

もし何かの拍子に祖母にばれてはいけない。


「週末来る?」

「……」

「別に来なくていいけど」

「行く」

彼とは短いやり取りだった。

彼の母がごめんねとずっと謝っている。

最近では背中から飛び出し彼の右肩に顔をのせている。


 週末、一応お伺いを出していたので神社前に晴明が待っていた。

倉橋晴明は俺の叔父(母の弟)にあたる。

「ほう!」

面白そうな顔をして剛志君をじろじろ()ている。

失礼だが、わからなくもない。

それくらい影妖狐がくっついてる彼の姿は不思議だ。


本殿裏の稲荷神社に案内される。

入り口の見た目より中は広くなっている。

中には“御母堂”と呼ばれている、うちの現存最古参の妖狐が座っていた。

名は“(ぎょく)”という、(よわい)は七・八〇〇というところか……

玉は四人の娘がいる。桜・陽・萩・椿だ。


その三番目の娘の萩と孫の月がここに参列している。

二人とも妖狐だが、薄らと泪をためているようだ。

萩は鏡の母で、月は弟という事になる。


『ほほう。やはり鏡の孫か。しかし、何故にそんな格好なのだ?』

「言っとくけどあの婆さん達、人に視えるけど妖だからね」

剛志君に一応言っとく。

「え?」

剛志君は冷静に対応しようとしているが、冷や汗かいて目が泳ぎまくっている。

「おばさんの高祖母にあたるのかな。そっちが曾祖母と大叔父になるよ」

剛志の母・充子には妖の本来の姿が視えていて楽しそうである。

『百年ほど前、私の子供で“鏡”というのがいたが、綺麗な男の人に惚れて契りを交わしたらしい。

絆が強かったのだろう。子が出来たと、聞いたことがある。

あんたを見ていると鏡が惚れるのも解る。ホホホ……』

剛志君を見つめながら萩が説明する。

「いつの話?」

『百年ぐらい前かね。月に聞いたことがある』

『一度だけその男に弟だって紹介された。

 ところが、相手が戦争から帰ってこなくて 姉が悲しんで大変だったよ』

月が説明する。

「それで祠に籠っている?」

『あぁ、その子が三歳ぐらいまで一緒に住んでいたんだが

 いつの間にか妖力が無くなり、妖狐の姿になってしまったので

 その子と離して知り合いに育てて貰ったよ』

『それが私の母?私は妖クウォーターと言うことになる?』

剛志君の母はますます楽しそうだ。


『しかし、お前のその姿は奇妙だな』

「息子に肝臓を移植したらしいよ。

たぶん肝臓から飛び出しているんじゃない?」

俺が聞いた話を皆に伝える。

「僕何も見えないし、聞こえないし」剛志君の不安な言の葉が玉婆に届く。

『あまり妖力は無いからな。ただお前の病気は全て母親が綺麗にしているぞ』

『本当?この子はもう大丈夫?』

剛志君の母は喜んで小躍りしている。

「息子を守るという意志が強かったのだろうなぁ」

晴明は感心するが、小躍りする姿はあまりにも奇妙だ。

「どうする?切り離せる?」俺が訊くと

『外せなくもないが』と玉婆が応える。

『しばらくこのままではだめ?

いつかは子離れせねばならないだろうけど』

剛志君の母が今度は神妙な顔でお願いをする。

「あと一年だけ。期限付というのは?

 その後は妖狐として修業してもらうのはどうだ?」

晴明の妥協案に皆が頷く。

『ついでだ。俺の右耳を一年間だけ貸そうか?』

月が意外な提案をする。

「そんなこと出来るの?」

『一応血の繋がりがあるからな。まぁ母親以外の声もするかもしれんが……』

「お願いします」剛志君が叫ぶ。

「以外と厄介だぞ」俺が呟く。

「?」

俺の耳も特殊だからなぁ……

月が剛志君の右耳に触れる。

『剛志……』

「お母さんの声だ、僕……」

『もっとちゃんとしなさい。……』

延々と説教が続くが、剛志君は泣きながら嬉しそうだった。


読んで頂き有り難うございます。

感想等いただけると幸いです。

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