冤罪で公爵家から追放されました。~そして誰もいなくなった~
私は父である公爵から、家族の縁を切られてしまった。
というのも、私の異母妹が私の悪行を告げ口したからだ。
もちろん、全て嘘だ。
この家の人間は、全員私を嫌っている。
だから、私は受け入れた。
この家からの追放を。
「エレナ。貴様を本日をもって公爵家から追放する。今日から貴様は我が家の人間ではない。そして、もはや私の娘ですらない。とっとと出ていくがいい」
こんな事を言っているのは、私の父であるガイウス公爵。
いや訂正。
今この瞬間、元父になった男だ。
そしてその隣にいるのは、私の腹違いの妹、アクアだ。
いや、これも正しくは元腹違いの妹か。
まぁ、いちいち元つけたり名前口に出すのは面倒だから、父と妹でいいか。
ちなみに彼女の母親も妹の隣にいる。
もちろん私の母ではない。
彼女、ミアは父の後妻だ。
この妹は、私のありもしない罪を父にでっち上げたのだ。
もちろん私は反論したが、父は私の言う事を聞かなかった。
元父が私の言う事を聞かなかった理由は、いくつかある。
理由その一。
妹は超美人だ。
美しい金髪、愛らしい顔。
まさに人に好かれる顔だろう。
そして、人に好かれる性格をしている。
まぁ、もちろん本性、つまり裏の顔は腹黒だが。
それに比べて私の髪は漆黒で、顔だって普通レベルだろう。
愛嬌ある性格でもないし。
理由その二
この妹は光と言うレアな種類の魔力を得ている。
魔力、それは貴族が持つ力(一部の平民も持っているけど)。
魔力量=強さも大事だが種類はもっと大事だ。
当然貴重な種類である妹はチヤホヤされている。
まぁ、魔力量は大した事ないけど。
一方私の種類は火。
はっきり言ってありふれた能力だ。
そんなこんなで妹は愛されているのだ。
ちなみに、この大広間には屋敷中の人間もいる。
多分、妹は私に恥をかかすために大勢の人を呼んだんだろう。
同意する父も父だ。
ちなみに、使用人達も私をさげすみ、あざ笑っている。
全員妹の味方だ。
父に嘘の証言をして私を苦しめた。
嘘を言うこいつらも問題だが、信じる父も問題だ。
本当、この家みーんなクズばかり。
「あの……お父様」
「貴様に父と言われる筋合いはない!」
「質問したいことがあります」
「ふん、いいだろう。一つだけ聞いてやる。なんだ?」
私が聞きたい事は一つだ。
「本気ですか?」
「何がだ?」
「私と親子の縁を切るのは本気かと聞いているのです」
「ふん。当たり前だ」
「分かりました。では今この瞬間から、私はお父様の子ではないという事でよろしいですね」
「そうだ!」
父がそう言った瞬間、後妻の女が爆発した。
比喩ではなく、文字通りの意味で。
辺り一帯が血まみれになる。
「お母様ー!」
妹が絶叫する。
周囲の使用人も大騒ぎだ。
ああ、うっさい。
今度は使用人が全員爆発した。
この部屋中が血まみれだ。
で、今生きているのは私、妹、父だけだ。
「な、何が起こった……」
父が呆然としている。
「教えてやるよ。ボケ爺」
「エ、エレナ。お前がやったのか」
ボケ爺と言われている事に怒らないくらい混乱しているらしい。
「私はこうなる事をあらかじめ知ってたからな。この屋敷の人間全員の体内に爆裂魔法を仕込んだんだよ。私の意思でいつでも魔法が発動できるようにしてな」
「そ、そんな事出来るわけが……」
「出来んだよ、ボケ。私はそこの出来損ないと違って、毎日コントロールトレーニングしてんだからな」
まぁ、かなり大変だったけどな。
他人の体内に爆弾を作る魔法は最上級クラスの難易度だから。
「てめぇらは種類ばっかり目を向けて、私の魔力量の多さに気付いてなかったからな。努力すればざっとこんなもんよ」
そう、私の魔力量は恐らく最強クラス。
測る方法が無いから分からないが、文献によるとこの魔法が出来るのは最強クラスと書いてあったから、そうなのだろう。
「待て、じゃぁ儂らの体の中にも」
「全員って言ってんだろうが、ボケ」
「……」
唖然としている。
面白。
「お、お姉様、止めて。私達家族じゃない。それに、その野蛮な口調も。いつもの優しいお姉様に戻って」
「うっせえな。てめぇらはもう家族じゃねぇんだ。あとな、これが私の素なんだよ。普段は猫かぶっていたんだよ。てめぇと一緒」
そう、この点だけは私とこいつは似ている。
裏が腹黒の妹。
裏が殺人狂な私。
どっちも裏の顔を隠している。
そして、裏の顔をうまく使い分けるのが妹。
うまく使い分けられないのが私。
そう、一度表に出すと止められないのが私の裏の顔の特徴なのだ。
いやー、本当私の家クズばかり。
一番のクズはやっぱ私かな?
「実はよ、前々からこの屋敷の奴ら全員ぶっ殺してぇと思っちゃいたんだ。でもさ、一応使用人含め家族だからって我慢してたんだよ。でもよ、そっちから家族の縁を切ってくれたんだ。感謝するよ。これで思いっきり皆殺しに出来る」
「そんな、お姉様、やめて」
「やめろ、実の父を殺すのか」
「あーもう、うっせえな」
私はイライラしながら言った。
「親子の縁を切ったのはてめぇらだろ!もうてめぇらなんぞ、親でも妹でもねぇ。これはてめぇらが望んだことだ。文句を言われる筋合いはねぇ」
こうして、二人とも爆発した。
……数日後、政府の調査機関がこの屋敷に入った。
屋敷の住人が全て肉片になった事件。
死因は、恐らく体内から爆破されたであろうことは推測できた。
しかし、それゆえに正確な死者数が分からない。
だが、屋敷の全員が消息を絶った事から、全員が死んだものであると判断された。
その頃……遠くの国で。
その話を新聞で読んだ私は、笑顔を隠すのに苦労していた。
「私が公爵家から追放されて、謎の事件が起きて公爵家にいた人間が皆殺しにされ、そして誰もいなくなった」
ああ、面白い。
本にしたら売れるかもね。
「とはいえ、私としては計算通りに行き過ぎて面白くなかったけどね」
小声でそう呟いた。
今、私はこの国で楽しく暮らしている。
表の顔はお店の店員。
裏の顔は連続殺人鬼。
二つの顔を使いながら。
この話、後書き書いていませんでした。
多分書き忘れです。
すみませんでした。(謝罪)
24年5月30日
[週間] ハイファンタジー〔ファンタジー〕ランキング - 短編:5位
おかげさまで、八万PV突破する事が出来ました。
これもすべて、お読みいただいた読者の皆様、星で評価をして頂いた皆様、感想をお書きいただいた皆様のおかげです。
本当に、本当にありがとうございます!
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