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野上さんは韻を踏んでいる気がする

作者: 中学校卒

~プロローグ~


大阪府堺市に在する私立学校「日本文学大学付属高校」

古来からの日本文学を学ぶこの学校は、昔から多くの小説家や脚本家を輩出している名門校である。

その歴史は古く、例えばあの映画だって小説だって、元をたどればこの学校のOBが書いたものであるということも珍しくない。

その学校の校門をくぐる一人の女子生徒に注目が集まっていた。

「おい見ろよ、野上さんだ」

「うわ!相変わらずすげえ美人…」

文学の専門校であるはずなのに、彼女を見る声はどこか花を見るような鳥を見るような、ましてや月を見るような素直な感想ばかりであった。

その注目の的である美女、野上小町(のがみ こまち)はその名の通り世界三大美女と言われる小野小町を彷彿とさせるような容姿で有り、話しかけるものすべてを跳ね除けるようなオーラを放っている。

普通周囲の人間に見られたら多少なりとも気にするものだが、彼女の場合慣れているため視線を気にすることなく、両耳につけているイヤホンから流れるクラッシックに集中しながら校舎へ入っていく。


彼女に憧れを抱くのは異性だけではない。廊下を歩く時も注目が外れることはなかった。

「何聴いているのかしら」

「さあね。あの人と会話できる人は見たこと無いからわからないわ」

彼女の容姿振る舞いは周囲の人とはまた別の存在のようである。

小町は気にすることなく、2―2組の教室に入ると窓側一番左の自分の席に座った。

コミュニケーションを育む学校の教育方針であるため、席替えは少なくない。

その為出席番号を無視した席順になるのだ。


席に座った小町はイヤホンを外すと音楽を止め、ケースにしまう。

カバンから教科書を取り出すと机に乗せ、右隣に座る男子生徒に声をかけた。


「構字くん、おはよう。教科書って今日はそんなに使わないよね?」

声をかけられた男子生徒、桜井構字(さくらい こうじ)は小町の方を振り返ることなく、

「そーだよ。おはよう野上さん」

と返事をして手元のスマホに目を向けなおす。その指は文字を打っていた。

他の生徒とは全く会話をしない小町だが、隣の席の構字とは会話をする。

最初はクラスメイトも不思議がっていたが、一か月も立つ頃には慣れてきて二人は"日常会話をするだけの仲"という関係に位置付いた。

しかし日常会話だと思っているのはクラスメイトのみである。

話しかけられた当の本人、構字はこんなことを考えていた。


(おはよう…教科書…今日はそ…やっぱり踏んでるよな…)

一方小町は、

(3つも踏んじゃった!気づくかな!)


小町は構字の気を引くためにステルス韻を踏んでいるのである。

しかし小町は気づかれていないと思っているが、構字はなんとなく気づいていた。


そんな恋心と韻が隠れた気持ちだけでなく、右手も挙がってしまうような、そんなラブ&コメディです。

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