こどもお悩み電話相談室
「はい、こちらこどもお悩み電話相談室です」
「……えっと……こどもお悩み電話相談室……ですか?」
「ええ、こどもお悩み電話相談室です」
「……いたずらとかではなく……本当にこどもお悩み電話相談室なんですか?」
「あなたしつこいですね! さっきからそうだと言っているでしょう!」
「……ええっと……間違ってたら申し訳ないんですが……君は……こどもだよね? しかも、多分僕より年下の……」
「それがなにか?」
「……まさか……こどもってそういう……せっかく勇気出して電話したのに……」
「何よ、その態度!」
「えっ」
「それが相談を依頼する立場にある人間の口の利き方?」
「ご、ごめんなさい……」
「はあ、全く。これだから近頃の若者は。それで?」
「はい?」
「まず名乗りなさいよ。学校ではそんな簡単なことも教わらないの?」
「あ、はい。佐藤ゆうた、小学三年生です」
「私は鈴木かりん。5歳よ」
「5歳……」
「何か文句ある? 私は1日数十件、累計で三万件以上の悩みを解決してきた輝かしい実績を持っているのよ。それでも信用できないっていうならとっとと電話を切りなさい!」
「すみませんでした! 鈴木先生よろしくお願いします!」
「で、お悩みは?」
「…………どうすれば…………好きな女の子に振り向いてもらえるか分からなくて悩んでいます」
「何それ」
「ええ……」
「そんなの精一杯アピールしてぶつかるしかないでしょう。一体どこに悩む要素があるっていうのよ」
「いや、でも……彼女はクラスの人気者だから、どう考えても僕なんかじゃ釣り合わないし……できれば相手から告白してもらえるようになりたいというか……」
「甘ったれるな!」
「ひいっ」
「自分は傷つくリスクを一切負わずに、どうにか楽して相手に好きになってもらおうなんて腐った根性が気に入らない。そんなヘタレに惚れる女がどこにいるっていうの?」
「ぐう」
「自己満足のための自分磨きなんて悠長なことをしている間に、誰か別のいい男に相手を掻っ攫われて途方に暮れるのがオチだわ」
「ぎゃふん」
「分かったら、さっさと放課後遊びに誘うなり、勉強会をするなりしなさい」
「……でも、もし断られたら……」
「一回断られたら諦めるくらいの気持ちなら、そんなの恋でも愛でもないただの気の迷いでしょ。行動する前からうじうじ言い訳して逃げようとするな!」
「は……はい! 僕……早速誘ってみます! かりん先生、本当にありがとうございました!」
プープープー
「…………あーあ……まったく、だらしのない男ばっかりで嫌になる。やっぱり青臭い未成年男子は恋愛対象にならないわね。うちの園長先生の渋さと哀愁を見習ってほしいわ……」