予感
ー6月18日ー
「おはよう、柳くん。」
「おはよう。」
朝、登校すると道畠さんと、あいさつを交わした。これだけ聞くと転校生との親密度としては、順調に上がっているように感じるだろう。だがしかし、僕の置かれた状況には、一つの問題が生じている。現在の時刻は、6時30分。朝のHRまでは、あと1時間もある。加えて教室には、僕と彼女の2人のみ。そう、読書ができないのである。いつもなら誰もいない教室でたそがれながら読書を楽しむのにもかかわらず、今日は、それが出来ない。このままだと学校で本を読むことが出来なくなってしまう。どうにかしなくては。
「早いねぇ柳くん。こんな時間に来てどうしたの?あ、宿題やってなかった?言っとくけど私宿題知らないから写さしてあげること出来ないよ。」
「いや、やってあるし、写さないよ。」
考え事をしていると、いつの間にかあらぬ疑いをかけられてしまった。
「ふ〜ん。まぁ、どっちでもいいか。それよりも今日の帰りは、どこに寄る?今日の気分は、甘いものかな〜」
なぜ僕と彼女がいっしよに帰ることが前提なんだ?
「なぜ、僕なんだ?そういうのは、女子に聞いた方がいいだろ。」
「だって〜。柳くんと行きたいから。」
「え?ん?それは、どういう意味で?」
急におかしなことを言われてあたふたする僕。
「さぁ?どういう意味だと思う?」
やられた。弄ばれた。妖艶な笑みを浮かべる彼女を見ながら、僕は1人落ち込んでいた………
授業中それとなく、道畠さんの方を見て朝の彼女の言葉について考えていた。そんな中で気づくことも多かった。例えば、彼女は、左利きで漢字が苦手。書き取り問題が出た時には、眉間にシワがよるまで難しい顔をして考えていた。正直ちょっと可愛かった。(うさぎを見ているみたいで)う〜ん。それにしても今朝の真意は、分からない。とりあえず今日の帰りに寄るところでも考えておくか。
「じゃあ皆、気をつけて帰るんだぞ〜。」
よし。やっと帰れる。早く家に帰って読書がしたい。
「よし、帰ろう。柳くん、結局今日は、どこに行くの?」
「ケーキの美味しいカフェでいい?」
もはや諦めモードに突入している僕は、そう提案してみる。
「良いねぇ、カフェ。タルトあるかな〜。」
そんなふうに幸せそうな彼女を見ていると、こんな生活も楽しいのでは、無いかと思うようになってきた。しばらくは、一緒に帰るのもいいかもしれない。
初めまして、ずんだ餅です。3話目にして初めてのあとがきです。この小説は、自分の初作品なのですが、ただただ楽しんで書いています。不定期ではありますが、楽しみながら頑張って投稿していきます。どうぞ暖かい目で見守って楽しんでいってください。