試練
優しくしちゃいそう。でも男に振り回されるのはもうこりごり。
ちょっと顔が良いからって、私を甘く見るんじゃないよ。
洗濯が嫌いだ。
ほおり込んで、まわして、干して、畳んで。
今朝、干した衣類は乾いているころ。だから、私は薫にご褒美をあげることにした。
服に食べ物の匂いがつくのは嫌だから、先に洗濯物を片付けたら食事にする。
『大丈夫です。家でいつもやってますから』と薫は言った。
「そうだったね」
それぞれ、畳み方を説明し言われた通りする。
パンツは折り目に沿って、シャツ類は形を崩さないようにハンガーにかける。
部屋着は表を外に、パジャマ類は背中を外に。靴下は揃えて2つ折りにしてしまう。
薫の手が止まった。
目の前にはブラとショーツがある。といっても外界と繋がりがないから、楽なやつ。
それでも、薫にとっては十分だと考えた。私はチラっと見て、ふっっと笑った。
「薫、何ガン見してるの」わざと言う。
私はさっと畳んで、引き出しに閉まった。
「分かった?今の畳み方にするのよ」
「残りもちゃんとやるのよ」
「しまうのは、私がやるから」
薫の顔は真っ赤。畳んだとしても私が片付けるまでどうしても目に入る。薫は下着を存在しないようとしているけど、無理な抵抗だ。
本当は他人に下着を触らせるなんて、虫唾が走るぐらい。
思いっきり我慢してる。
でも、きっと薫にとっては十分過ぎるご褒美?だ。
おもしろっ。
魚釣りの餌?美味しそうだけど食べたら終わり。もし、私の下着に何かあれば、薫をぜってい、地獄行にしてやる。ほーっほ。しばきたたおす。なじりたおす。食事抜き。アイデアはとめどなく出てくる。
三枚におろしたろーか~。
薫は今回のクエストを達成した。ちょっと腰が引けてたみたいだけど。えらいね。良くできました。
食事はサンドイッチにした。
私はお野菜多めの色とりどり、薫にはベーコンたっぷりBLTをつくる。
薫はBLTをほう張りながらも、肘をついて食事する私の口元と手を見ている。そして腕の間の奥に目に入るもの。薫の瞳を覗くと、すっと胸元から目をそらす。
やっぱりね。お馬鹿な妄想してるんでしょ。男はどうしようもないなぁ。最低だよ。ちょろい。
「紅茶を入れてくれる?アプリコットのの」
『はいっ』と返事がある
私のいう事をちゃんと聞くのよ。
ソファーに座って紅茶をすすると、カップからいい香りがする。
薫はキッチンで洗い物をしている。濡れた手ですすいだお皿をラックに慎重に置くのが見えた。
さっきの下着を畳む綺麗な指使いを思い出すと恥ずかしくなってきた。
これは私にとっても試練かもしれない。次はレベルをあげようと決めた。
ラスボスはランジェリー系かぁ~~。うん、やめておこう。