表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: ぴのり
6/28

美容院

朝は部屋に来させた。

いつものカッコウで美容院に連れて行く訳にはいかない。それなりの服じゃないと、こっちが恥ずかしい。学生服のスラックスはそのままにして、白の残したシャツと靴にする。足元は大事だ。薫は着替えると、トイレに行った。ちゃんと、整えたのにトイレいくんかよ。


私の後をついてくる。なんか変な感じ。中学生?高校生?を連れてる。偉そうなお姐さん?

ううん。年の離れた弟を連れているお姉さん。と自分に言い聞かせた。

あ~。失敗した感じ。何をこの子に求めているんだろう。でも、この変竹林な髪型は嫌。


行きつけの美容院には2人で予約してある。予約する時「もう一人は男の子」と説明してある。

今朝、鏡を覗いたとき、このままじゃあ、年の若い婆さんになっていく気がしたから、髪を軽くして、明るめの色で染めるつもり。思い切ってショートでも良いかな~と。ばっさり。そう。バッサリって言うのも悪くない。

薫は、お店の人に任せるつもり。

それでも、お店の人が薫に”ご希望”を聞いていたので、

「ばっさり、いっちゃって」

「清潔感のある、気持ちいい感じに」と声を掛けた。わたしの言うことは絶対なの。

薫はあっけに取られている。まずは薫の髪で”ばっさり”を試す。それから考える。


「碧さん、本日はどうしましょう?」と声を掛けてきた。

カウンセリングしながら、色合いを決める。カラーが変わると気分も変わると思う。先に染め出した。ちょっと鼻につくにおい。雑誌をめくりながら、面白い記事を探す。人の不幸を見るのは楽しいけど、今は嫌。だから、旅行のページをみている。薫は髪を濡らしてカットに入っているみたい。


みんな何かを見ている。鏡の反対側の人も、カットされながら瞳が動いてる。

カラーを流してトリートメントをして、席に戻る時、薫の担当に呼び止められた。

「こんな感じで、、、?」

私に聞くんかい。言ってあんじゃん。もう。と思って、鏡に映った薫を見ると。

????。

確かに服はさっきと同じ。良い香りまでする。そうだ、この子、緊張してたせいでトイレに行ったんだ。

????

顔って、こんなだったっけ?テレビでやってるビフォーアフターの声が聞こえてくる。

「まぁ~。なんてことでしょう」的な、、、、。


顔小っちゃい、目大きい、形きれい、ちょっと野性味がかってる。鼻、高い。口可愛い。

誰、この子????

頭の中に”はてなマーク”が飛び交う。この子誰の子?2週間顔を合わせてたけど、筈だけど。

ひれ伏してる所、うつむいている所、下ばかり向いてた所しか記憶がないような、、、。


ヤバい!

そうか、みんな薫をみてソワソワしてるんだ。今はきっと私たちを見てる。って言うかしっかり見られてるし、聞き耳を立てている。


「うん、いいんじゃない」と店員に言った。内心はドキドキ。タオルを頭に巻いているのを見られるのが恥ずかしくなってきた。薫のセットが終わると、ベンチからこちらを見ている。

見んなって。途中なんだから。


路線変更、ちょっと、若めに。大人に。どうしよう。ショートやめ。まだ童顔気味の私には大人すぎる感じがする。どうしたら良いか分からなくなってきた。その時、スタッフより揃えて少し巻きましょうか?と言ってきたので、それにした。そして、「軽くメークもして」と言った。


だいたい仕上がった(ほとんど完璧)ところで、他のスタッフが薫を呼んだ。フロアを一直線に歩いて私のところに来る。みんなの目線が薫を追う。だよね~。私の座っている席の隣に立って、一緒に鏡をみる。小さく「きれい」と薫がつぶやいた。その後にスタッフが「いかがでしょう」と薫にも聞いてきたので「素敵です」と答えてた。


2人でレジのあるカウンターに向かう。カウンターの前で薫を見ると、なんかスッキリしない。

髪、良い。顔、良い。服 ギリ。

あっ。姿勢だ。

薫の胸に手を当て、もう片方の手でお腰を前にだす。すっと背筋が伸びた。それと同時に左足のつま先がちょっと開く。そして、あごを下げる。うん。完璧。


スタッフが微笑んでみている。人前だった。「猫背になってるよ~」と言って誤魔化した。

支払いを済ませると、スタッフがドアを開けて見送ってくれる。薫が私を促しながら並んでお店をでた。

「良いんじゃない~。私の良いんじゃない~。」と心で呟いた。


風が吹いて優しく香りを届けてくれた。


でも、学生服のスラックスは頂けない。きっと他の人は学生服って分からないけど。

「よし、薫。パンツを買ってあげよう!」

ちょっと気分が良くなった私は薫のお尻を叩いた。

『ひっ』と言う声がしたが、きっと空耳だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ