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  作者: ぴのり
5/28

トイレ

食パンを買ってきた。

「これじゃない」って言おうとしたけど、やめた。何を持ってきても、これじゃないなんて、そこまで意地悪くないし。ちょっと言いたいけど。私ってこんな人間だったかしら???。


 キッチンを説明し、薫に作らせた。そのかわりとして一緒に食べる。そして、毎日朝食をここで取るように告げた。ちゃんとした食事だよ。ほら。

私はトーストとコーヒー。

薫はトーストと牛乳。


無言の世界が広がる。


「そー言えば、夕飯って”余りもの”って言ってたよね」と聞いてみる。

『うん、はい』と言い直して

『ばーちゃんの喉が通りやすいもの、おじやとか、スープみたいな』

「それだと、お腹すかない?」

『大丈夫です』

この子は何を聞いても”大丈夫”と言う。

「う~ん。そうね~」

「水曜日の夕飯と土曜日のランチを付き合いなさい」と言ったら

すかさず

『良いんですか?』と返ってきた。

やっぱ、足らないじゃん。

「水曜・土曜は朝は無し、自分で何とかしなさい」

『ありがとうございます』

毎朝来られるのも困るし、あと一回ずつで2週間も経つし。

完治したら、どうなるんだろう?

あんまり、考えてないけど。まあ。どうでもなるかぁ~。


水曜の朝に『おはようございます』ラインがあった。モーニングコール???返信はしなかった。

体調がすぐれない。隠遁生活が長いせいなのか、体に変な癖がついている。薫が朝に来なかったせいか、昔の生活に戻ったような、、、。着替えるのすら、めんどう。

 

約束の夕飯は部屋で取ることにした。外出する気も、食事をつくる気も全くない。ファストフードを買って来させることにした。私はサラダで十分。薫は好きなものを選ぶようにと言ってある。飲み物は自分で用意したほうが良い。お湯を沸かしハーブティーで。


体も重いような気がする。気分もあまり優れない。音さえもうざく感じる。それでも、少し微笑みながら、薫と向かい合わせで食事をとる。顔が髪で隠れて良く見えない。こちらを見ないから睨んだ。

何ビビってるの。怖か~ないよ。


薫が後片付けをし、程なくしてトイレに行った。


「ジョボジョボ」音がする。それも長い間。

ふぅん。何その音。


私は勢いよくトイレのドアを開けると、上がった便座とズボンを上げる薫がいた。


「あんた、何してんの?」

『えっ、おトイレ』

「そんなことは分かるわよ、立ってしたでしょ。」

『うん』

「だめに決まってるでしょ」

『、、、、。』

「ハイは?」

「座ってするの」

『、、、、。』

「分かった?」

『はい』

「もう~、トイレの回りを拭いて、便座を元に戻して。」

トイレのドアを閉めると、薫が分かるわけ無いと思った。白は何度言っても聞かなかった。それを我慢した。そんなことは嫌だ。薫には絶対守らせる。


おもむろにクローゼットに行って、香水を持ってきた。私が白にプレゼントしたやつ。別れた時に持って行かなかったやつ。何となく捨てられずにいたやつ。


トイレを開けると渡し

「匂いが気になる時があったら、これを一吹きするのよ」

「ううん、どんな時も洗面に入ったら毎回やるのよ」

「かならずよ」

「ほら、やってごらん」

薫は上に向けて一吹きする。香水の粒は手から放たれ薫を覆った。香水は少しづつ減っていく。空になったら瓶はゴミよ。割ってもいいわ。リビングに座ると、ほんのりと薫から香りがしてくる。小さい犬のように怯えている。まだ、何か怒られると思っている。

私の好きな香り。気持ちが落ち着いてきた。


「それと、トイレは鍵をかけてね」

「強く言ってごめんね。薫」と声をかけた。

黙ってないで、お返事はなんかあるでしょう。目の見えない、その前髪! が気になる。なんで目を隠す?全く表情が分かんないよ、もう~。うざっ。


「こんど、一緒に髪を切りに行こうか?」

『まだ、大丈夫です』と言った、けど、

「そうね、土曜のランチの前にしよう」

その変に伸びた不潔そうな髪は嫌。


今度の土曜日で2週間の節目。ちょっとだけ厳しかったかもしれないけど、薫は良くやってきた。あとは、私のためにバイトで稼げ!なんなら私が高額バイトを紹介しちゃうわ。


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