謝罪
次の日
彼は謝罪に訪れた。
オートロックのエントランスからチャイムが鳴り、カメラ越しに彼の姿を見つけた。
エントランスに向かうといきなり、土下座し、ひれ伏してた。
「何しているの?」
大きな声で、人目もはばからず『このたびは大変申し訳ありませんでした』と言った。
エントランスとはいえ、さずがに中学生の土下座はまずいと思い。
部屋に連れて行くしかないと思った。私より小柄の華奢な子。
「入りなさい」
彼は入り口で玄関でひれ伏している。
「なに」
『親とくるように言われたのですが』
「そうね、それが普通ね」
「未成年だからね」
『親がいなくって』
「???」
「私立の名門中学校のブレザーを着ているくせに、親の教育の低さと言ったら」
『ばーちゃんと2人暮らしなので、それと、高校生です』と彼はすかさず言った。
「そう、親はどこにいるの?」
『両親ともいません』
『父は会ったことが無いですし、母も僕が3歳の時にばーちゃんに預けてそのまま』
「そんな子がどうして、高校にいけるのよ?」
『私立は授業料免除の奨学金がでますので、それを活用させて頂いています』
と彼は答えた。
「公立中学からの有名私立って、頭がよいのね」
少し、話を聞いてみようと、部屋に上げることにした。
ソファーに座ると彼は机の横に座り直した。
確かに、制服は綺麗だがそれ以外は擦り切れている痕がみえる。
この子と白とは違うと分かっていても、許すわけがない。
頭を下げる彼をみていると、余計に白の事が思い出される。
彼はただただ謝るだけだった。
「で、何ができるの?」
『お金は無いので、バイトをして返します』と答えた。
「お金?」
また、お金と思った。現金だけ?だとも思った。
何を考えているの、お金で済むと思っているの?
私の傷はそんなもんでは癒されないと。
完全に白と混同している自分がそこにはいた。
初めて、彼の学生証をみた。確かに高2年生だった。
名前は 薫
「じゃあ、2週間程度完治するまで掛かるそうだから
学校に行く前に朝食の支度をしなさい。あと、雑用も」と告げた。
医者は怪我した時の処置が良かったから、長引かないと言ったけど、
言わなかった。