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56-5


 優真のドロップキックをまともに食らったパルシアスは床を転がった。 

「なんなのお前!? 挨拶がドロップキックとか何処の野蛮族!!?」

「お前がなんなの? だよ! お前ふざけんなよ! 人にあんだけ辛い思いさせといてひょっこり出てくるとか! 返せ! 俺の涙を返せ!!」

「いやだって、女神様の命令だし」

「知るか! あと一発くらい殴らせろ!!」

 尻を床につくパルシアスに向かって、優真が拳を握る。

「えぇぇぇぇ……拒否権は?」

「あると思うか?」

「ですよね~」

 優真の威圧的な返答に苦笑いを向けるパルシアス。しかし、優真が殴ろうとしたその時だった。

「あっやば」

 何かに気付いたのか先程まで見ていた病室に視線を向け、指を鳴らした。

 その直後、パルシアス、優真、ハナの姿は廊下から消えてしまった。


 ◆ ◆ ◆


 病室の扉を開いた子どもを司る女神は目を擦りながら周りを見るが、そこに人影はない。

「……なんか騒がしかった気がするんだけど……治療を司る女神様の眷族でも通ったのか?」

 そんなことを呟くと、彼女は扉を閉め、中に戻った。

 そして、そこにあるベッドの傍に座ると、哀しそうな目を見せた。

「……せっかく前みたいに本を読んでもらえるような関係に戻ったと思ったのに……君はまた私を待たせるのかい?」

 そのベッドに眠る男を見て、彼女は寂しそうに呟いた。


 あの戦いのあった日から、創造神の眷族筆頭ことキュロスは未だに目を覚まさない。

 治療はここを本拠にしている治療を司る女神が行った為、ほとんど終わっている。ただ、彼の受けた攻撃は、破壊神の力を神喰らいによって得たバラドゥーマが放った全身全霊の一撃だ。それをまともに受けた以上、目を覚ますのは早くて数年先になるだろうと言われていた。

 だが、それを知って尚、子どもを司る女神は毎日のようにここへと通っていた。


「そうだ……私ね、もう少し神を続けられることになったんだ。……なんでも、今回の件で多くの神が眷族を失ったみたいでさ、今は地上に回す程の余裕すらないから、落ち着くまでの数年間は私に地上を任せてくれるんだって……」

 そう言うと、彼女は遠い目で明後日の方向を見始めた。

「……皮肉なものさ。あんなに望んできたはずなのに、君を拒んでまで神になりたいって望んできたはずなのに……今はここに居て、君が目覚めるその時を待っていたいって……そう思ってるんだ。……笑っちゃうよね」

 そう言って、彼女は儚げな笑みを目覚めないキュロスに向けた。


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