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目を覚ますと、其処は見覚えのない場所……いや、何度か見たことのあるような部屋だった。
白いベッドに白い布団、腕に繋がれた細長い管と、それに繋げられた道具は入院した時に四六時中繋げられた点滴によく似ている。というか、どっからどう見ても病室にしか思えなかった。
(……なんで俺、こんなところに居るんだ?)
そう思った俺は、部屋の中に二人の少女を見つけた。
それは、栗色の茶髪をツインテールという髪型にしている少女と、栗色の茶髪を首もとまで伸ばした幼き少女。
シルヴィとシェスカがそこにいた。
その姿を見ていると、つい顔が綻んでしまう。
二人は、ベッドの傍で一つの丸椅子に座って仲良く寝ていた。
シェスカを抱きしめて眠るシルヴィの寝顔は、見ていてほっとした。
全部終わったんだと、そう思えるような安心感があった。
「……ん?」
何かを感じ取ったのか、シェスカがその重そうなまぶたを開けた。
彼女は俺の方を見てもなかなか喋らず、俺はつい苦笑いを浮かべてしまう。
「おはよう、シェスカ」
なんと言っていいかわからなくなった俺は、とりあえずそう声をかけるが、シェスカはおはようと返さず、右手で両目を擦り始めた。そして、改めてこちらに視線を向けた彼女のまどろんだ瞳が徐々に覚醒していき、すぐに嬉しそうな表情を見せた。
「ねぇねぇお姉ちゃん!」
「イッタイ!!?」
勢いよく振り返った彼女は、シルヴィの顎を下から頭突きしてしまい、シルヴィの体がのけぞってしまう。
シェスカも頭をぶつけたはずなんだが、彼女は平気そうで、今は首を傾げながら、シルヴィの方を見ていた。
「だ……大丈夫か?」
痛そうに口元を押さえるシルヴィを見て声をかけるが、シルヴィに気付いた様子は見受けられない。
「いたたぁ……もぉ……いったいどうしたって……!? ユーマさん!!?」
ようやく気付いたらしく、シルヴィが俺の方を見て驚いたような表情を見せた。
どうやらかなり心配をかけたようだ。
「悪い。心配かけた」
「そんなこと気にしないでください! そんなことよりお体の調子はいかがですか? どこか痛むところとかは……」
シェスカを下ろし、シルヴィが俺の体に触れる。薄い服越しだったせいか、彼女の手が触れたところに激痛が走る。
「だ……大丈夫ですか!?」
表情に出てしまったのか、彼女が不安そうな表情で聞いてくる。そんな彼女に、俺は慌てて作り笑いを向けた。
「大丈夫、大丈夫……ちょっと痛かっただけだから……寝てたらすぐに良くなるよ」
そう返すが、彼女の顔は明るくならない。
「……そうですか……」
そう言うと、彼女は丸椅子に座った。




