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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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55-123


 失敗は許されない。


 威力も、殺意も必要ない。


 必要なのは、父さんを元に戻したいという強い意思だけ。


 優真は一つ深呼吸をして、刀を構え直す。

「ねぇ父さん……俺さ、父さんをこっちで見た時さ、辛い気持ちになったんだけど……それでも本当は嬉しかったんだ。もう二度と会えないと思ってた人が別の世界で生きてた。……嬉しくないはずがないじゃないか……」

 刀を握る優真の手に雫が落ちる。

「こんな出会いじゃなくてさ……人間達の住む町とかで偶然会ってたりしたらさ……素直に涙を流して喜べたのに……。お酒を飲みながら色んなことを話したり、皆に父さんを紹介したり……そんなことが出来たら、どれだけ良かったことか……」

 優真の体からプラチナ色のオーラが放たれ、辺りを彼の色で染め上げていく。

 そして、優真が刀を下段に構えた。

「でも、それはもう叶わない。きっと、ただの眷族に過ぎない俺の言葉なんて神は聞こうとしないだろう。だから……ずっとずっと言えなかったあの言葉を今、言わせてほしい」

 優真は地を蹴った。


(十華剣式、最終奥義……)


 刀を振りかぶる優真は、儚げな笑顔を浮かべながら涙を流す。


「ありがとう、父さん」


 その言葉と共に、優真は優雅の体を斬った。


「天竺牡丹の舞い……」


 そう呟き、刀を鞘に収めた優真の背後で、優雅は倒れた。


 ◆ ◆ ◆


 優しくて、真面目な子に育ってほしい。


 そんな思いを込めて、優真という名を付けた。


 斬られた瞬間、不思議と痛みは無かった。

 斬られたはずなのに、優しくて暖かいぬくもりを感じて、自分を縛っていた鎖が断ち斬られたような感覚を感じた。

 自分が斬られて感じるのも変な話だが、真っ先に浮かんだ言葉は、その言葉だった。

「……大きくなったな……優真……」


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