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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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 ユリスティナが万里華の介抱に向かい、優真はキューブの前に立った。キューブ越しだというのに、立っているだけで、その禍々しいオーラを感じてしまう。

 大きく息を吐く。

「よしっ!」

 そう言って足を踏み出そうとしたその瞬間ーー

「だめぇええええ!!」

 そう言われて鋭い突進をその身に受けてしまう。

 優真が視線を向ければ、ファルナが抱きついてきていた。

「だめ! お兄さん危ないよ! ここ危ないよ!!」

 その不安そうな顔に、優真は何も言えなくなってしまう。

 彼女の危機察知能力には優真も一目置いている。おそらく、パルシアスの神器の能力が切れたことで、反応してしまったのだろう。

「ありがとう、ファルナ……でも、俺は大丈夫だ。ファルナがカリュアドスさんに立ち向かったみたいに、俺にも、絶対に逃げられない勝負があるんだ。だから大丈夫!」

「でも、僕負けちゃったよ? お兄さんも負けちゃうの?」

 ファルナがそう言った瞬間、優真はつい苦笑してしまう。

「俺が負けると思うか?」

 その言葉を聞いた瞬間、ファルナは何も喋らず、抱きつく力を更に強めた。

「……どうした?」

「お兄さん、まだだめ! だから、ファルナの力を貸したげる!」

「……ファルナ……!?」

 優真がファルナの頭を撫でようとした瞬間、四方から抱きつかれた。

「おじちゃんにあたしの力をわけたげる~!!」

「ボ……ボクもです! 戦いには役に立たないかもしれないですけど、ボクもおじさんの力になりたいです!」

「…………」

 彼女達が抱きついてきた瞬間、体に暖かいものが流れてくるような感覚を感じた。

「ドルチェ……イアロ……スー……皆ありがとう……」

 一筋の涙を流した優真は目元を右腕でこすり、ハナとメイデンの方に視線を向けた。

「皆を頼む!!」

 その言葉を聞いた瞬間、ハナとメイデンは顔を見合わせ、再び優真の方に目を向けた。

「こっちのことは任せて!」

「……大丈夫……皆には私達がついてる……だから……頑張って!」

 ハナのいつも通りとメイデンのぎこちないながらも気持ちが伝わってくるその笑顔に、優真は安らぎを覚えた。

 彼女達なら大丈夫だと、自然とそう思え、優真は二人に笑顔を向けた。


「おう! 行ってくる!」


 そして、ファルナ達をある程度離し、キューブに足を踏み入れようとしたその瞬間、優真は大声で名前を呼ばれた。

「優真!!」

 その声に振り返れば、彼女は座ったまま、こちらを睨んでいた。その目からは止まることのない涙が流れ続けている。

「優真が死んだら、私も死ぬから!! だから! 絶対に私を殺さないでね!!」

 その言葉を聞いた瞬間、優真は微かに笑った。

「それは困るなぁ……今までなんやかんや人を殺すのだけは回避してきたのに、よりによって初めてが万里華? それだけは絶対に嫌だな……でも、安心しろ」

 そう言った瞬間、優真は足を踏み出し、抵抗することなく沈んでいく。

「俺は、誰も殺す気はないよ」

 その言葉を残し、優真は全員の視界から消えた。


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