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10-13

 しばらく泣き続ける彼女を抱えていた優真は、シェスカを地面に下ろして、その少女を真剣な顔で見つめる。

「……シェスカ……ごめん…………今日からは誰か別の人に育ててもらうんだ」

「……お兄ちゃんもどこか行くの?」

 その言葉で泣き止んだシェスカが不安げな顔で聞いてくる。

 シェスカの言葉が胸を締め付けてくる。こんなにも幼い子に辛い別れを経験させている自分が嫌になる。

「…………ああ、これでお別れだ。皆の言うことをちゃんと聞くんだぞ」

 いつもは撫でれば嬉しそうな顔をしてくれるシェスカがこの時に限っては嬉しそうにしてくれない。

 その言葉にシェスカは泣くのをを我慢するだけで頷いてはくれない。

 だが言うべきことは言った。これ以上時間をかける訳にはいかない。


「そういうことなら、私からシェスカちゃんに一つだけ言わせてもらいましょう」

 俺が腰を屈めてシェスカに別れを告げていると、ハルマハラさんが横から声を挟んできた。

「あなたも正直に自分の気持ちを伝えなさい。このままではユウマ君ともお姉さんとも二度と会えなくなるのですよ? あなたが伝えたい言葉を伝えられるのは、これが最後の機会になります。悔いのない選択をしなさい」

 ハルマハラがそう言いながらシェスカの頭を撫でると、シェスカはその細い腕で涙を拭った。


「シェスカも行くっ!! もう待ってるだけなんてやっ! パパもママも帰ってこなかったもん! シェスカもお姉ちゃん助けに行くっ!!」

「……シェスカ……本当にいいのか? 今までみたいに楽しいことばっかりじゃないんだぞ?」

「それでもいいもん! お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒にいたい!!」

 シェスカの意見は俺の言葉を聞いても曲がらなかった。

(確かにシェスカがいてくれれば、俺は【ブースト】の力で加速できる。……それだけじゃない。力が増せばシルヴィを助けられる可能性もはね上がる。相手にはハルマハラさんでさえ、敵わないと思えるような敵がいる。能力が【勇気】しか使えない状態の俺じゃ勝てないかもしれないんだ……)


 俺だってシェスカとシルヴィを離ればなれにしたくないのはハルマハラさんと一緒だった。それでも危険な目にあわせたくないのも事実で、どうしても決断出来なかった。

「ユウマ君はこの子一人満足に守れないのですか?」

 ハルマハラさんが俺の耳に囁いてきた言葉で、俺の考えは決まった。

「……怖いかもしれないけど俺が絶対守る。……だから、側を離れないでくれよ」

「うん!」

 シェスカが力強く頷いたことで、シェスカの同行が決定した。


 ◆ ◆ ◆


「これを着ていきなさい」

 シェスカの同行が決まると、ハルマハラさんは俺とシェスカの二人に薄いローブをくれた。

 いつの間に持っていたんだろうと疑問に思ったが、それを聞く前にそのローブについて説明された。

「そのローブは風の神が加護を与えたものです。本来加護をつけられた道具は、信仰者にしか持てないのですが、風の神は寛大なのであなたが身に付けても力を貸してくださるでしょう」

「あ……ありがとうございます」

「……これでお別れですね。若い子達がいなくなるのは寂しいですが、これも全て神のお導き。受け入れるとしましょう。それから彼女の墓は、スティルマ大森林にある聖域に創らせていただきます。シルヴィさんを助けた後、彼女を連れて寄ってあげてください」

 俺はその言葉に頷いた後、3人に頭を下げた。俺の隣では俺の真似をして一緒に頭を下げるシェスカの姿があった。

「ハルマハラさん、マーカスさん、ライアンさん、お世話になりました。あなた達には本当にいろんなことを教えてもらって本当に感謝しています。恩を仇で返すようなことをしてすいません」


 三人に別れの挨拶をした俺は、シェスカを背負って再びスティルマ大森林の中へと入った。

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