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パルシアスに斬られた優雅の体はもやのかかったまま、固まった。それを見た優真は膝から崩れ落ちた。
「パルシアス……てめぇ……」
「気を抜くな!!」
優真がパルシアスを睨み付けた瞬間、パルシアスが怒鳴る。
その普段とは違う様子に、優真も驚きを隠せない。
「僕の神器に秘められた時空切断の能力は、時間も動きも封じるものだけど、今の彼相手に神器の効果はそう長く持たない!! 君が【剛勇之王】の力をどこまで理解しているかは知らないが、気を抜けば効果が切れるぞ!! だから彼の時間が止まっている間にあいつを探ーー」
「このどぐされ野郎!!!!」
その言葉と共にパルシアスの体を少女のドロップキックが襲った。
パルシアスの体はいとも容易く吹き飛ばされ、彼にドロップキックを食らわせた白髪の少女は地面に着地した。
「おいパルシアス!! お主なぜ生きておる!!! というか生きておるなら生きておるで妾の手助けをせんか!!!」
「や……やぁ、ただいま……エパル……」
「ただいまじゃないわ、ボケぇ!! お主が居らんせいで妾がこき使われたのじゃぞ!! お主絶対許さん!! 妾の気が済むまで殴らせるのじゃ!!!!」
「それはまぁ……後でいくらでもさせてあげるからさ……まずは自分の仕事を……」
パルシアスがドロップキックをされた腹部を擦りながらそう言うと、彼女は露骨に嫌そうな表情を見せた。
「お主……まだ妾を働かせるつもりか?」
「ハハハ……」
「ハハハ……じゃないわ、ボケぇ!! 妾はもう疲れたのじゃ!! 時間稼ぎの為にぼこぼこにされたり、時間稼ぎのためだけに本拠に力を行使したり……妾を酷使しすぎなのじゃ!! 妾はもう働きたくないのじゃ!!」
エパルの言葉に、パルシアスは苦笑いしかできなかった。
彼女が自分の代わりにどれ程働いたのかを見ていた彼にとって、彼女がそう言うであろうことはとっくに読めていたからだ。
「まぁまぁそう言わずに、これはユウマの為でもあるんだよ?」
その言葉を聞いた瞬間、少女の顔がちらりとそちらに向けられる。
「……ユウマの?」
「そうそう。世界を救うなんてことは君にとってどうでもいいことかもしれないけど、ユウマが喜ぶならエパルも嬉しいでしょ?」
「……それは真か?」
その言葉に、優真は訳がわからないまま頭を下げた。
「すまない。俺の勝手だってことはわかってるんだが、どうにかできる方法があるっていうのなら……力を貸してほしい!!」
優真の言葉を聞いた瞬間、少女の表情が嬉しさの入り交じったものになり、彼女は腕を組んでそっぽをむいた。
「しょうがないのぅ~。ユウマがそこまで言うのであれば妾も力を貸すのは吝かではないぞ。じゃが、条件がある」
「わかってる。お前が望むならなんだって叶える。だから頼む!!」
「……わかったのじゃ……【空間之王】発動なのじゃ!」




