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その銀色の茨が特大の魔法を放とうとしていたイルジョネアと、その傍にいたルナを襲う。だが、それだけではない。
その銀色の茨に付着していたミクロサイズの種子が、彼女の特殊能力によって急激な成長を開始し、無数の蔓となって、アポロンや他の眷族達を襲う。
「遅くなってごめん!!」
突如上空から人の声がし、優真はそちらに視線を向ける。
それを見た瞬間、優真は刀を収めて両手を胸の前につきだした。その直後に桃色の髪の少女が優真の両腕に降ってきた。
「ナイスキャッチ」
嬉しそうに笑顔で優真にそう言ったハナの直後に、銀髪の少女が近くに着地する。
その軽やかな着地をしたメイデンの表情を見て、優真はつい小さく笑ってしまう。
彼女はハナを羨ましそうに見ていた。
「……ハナずるい……」
「役得だわ~」
ハナはそう言いながら、優真の腕の中でうずくまり、お姫様抱っこを堪能し始めた。
「おかえり、二人とも……無事で良かったよ……と言いたいところなんだけど……なんで上から降ってきてんの?」
余程気になっていたのだろう。
優真はハナを下ろしながらそんなことを訊き始めた。
「いや~外にいっぱい眷族居たし~、じゃあ地面から突っ切っていくかって感じで、ね?」
「……ね? と言われてもよくわからんが、とにかく来てくれて助かったよ……!?」
優真がそう言った瞬間、この場にいる全員が一つの異変を感じ取った。
◆ ◆ ◆
またお前らは俺から何かを奪おうというのか?
神だから? 眷族だから? そんなつまらない理由でまた! 俺から大切な存在を奪おうというのか!!
俺達が殺されるのは別に構わない。
俺達が殺されるのは、俺達も覚悟のうえだ。だが……優真が敵視されるのには納得いかない!!
あいつは俺を必死に止めようとしていた。
事件が起きるまで静観していた奴らが、事件の前から事件を止めようとしていた優真を、なぜ裏切り者と呼ぶ!!
なぜ、この世界を救おうと動いた息子を、お前らは殺そうとするんだ!
……許さない。
息子だけは……俺の大切な息子だけは、絶対にお前らには奪わせない。
来い!! 【噴炎之王】!!!




