表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
941/970

55-103


 アルゼンの持つもう一つの特殊能力、それこそが破壊を司る男神をも殺した際に切り札となった【死の交換(デストレード)】であった。

 これは致死量の攻撃によるダメージを自分、または他者が受ける際に、位置を変更できる能力である。

 アルゼンは破壊神との戦いの際に、この特殊能力を使用し、バラドゥーマの全身全霊を込めた一撃を自分に打つよう指示をだし、破壊神の裏をかいて勝利した。

 そして、今回もそれを使用した。

 優真が攻撃される直前に、自分と優真の位置を交換したのだ。


 優雅を抱き起こしていた優真と位置を交換したことで、アルゼンの体は優雅に倒れこむ。

「アルゼン!!」

「案ずるな。次はお前だ……!?」

 優雅に対してそう言ったクレエラは次の瞬間、背筋がゾッとするような恐怖を感じ取った。

 彼女の生存本能は、優雅を殺すことよりもその場を離れることを優先させる。

 そんなことには一切気付かない優雅は、目を閉じたアルゼンの名を何度も呼んでいた。

 そして、その懸命な呼び掛けが通じたのか、アルゼンはうっすらだが目を開いた。

「……うるさいなぁ……眠れないじゃないか……」

 今まで以上に弱々しい声で彼はそう言った。


 いくら瀕死の状態だったとはいえ、彼は死神の力を喰らった眷族だ。どんなことがあっても、彼の中に眠るその力が彼を生かしてしまう。だからこそ、死神はアルゼンに殺してもらうしかなかった。だが、それを信じられなくなるほど彼は今にも死にそうな状態だった。

「あの剣……多分特殊能力の類いを封じ込める能力があるのかもね……」

 自分の身にかかった異常を理解したアルゼンの言葉に、優雅の表情が焦りを見せる。

「ふざけるな!! お前まで俺の元から居なくなるって言うのか!!」

 涙を流しながらまくし立てる優雅の表情を見て、アルゼンは安らかな表情を見せた。

「……大丈夫……ちょっと二人の家族に会ってくるだけだから……またいつか会えるよ……いや……」

 そこまで言った頃には、彼の体はほとんどが光の粒子と化していた。そして、彼は一筋の涙を流して、小さく笑う。

「……やっぱり君とはもう会いたくないかな……だから、二度と私に顔を見せにくるなよ……」

 その言葉を残し、アルゼンは完全に光の粒子となって、この世から消えた。


 ◆ ◆ ◆


 慌てて優雅の傍を離れたクレエラは、その強烈な殺気を放っていた存在に視線を向ける。

 そこには、どす黒い殺気を放ち続ける優真の姿があった。

 あと少し判断が遅れていれば間違いなく死んでいたことだろう。そう思える程の殺気を彼は放っていた。

「俺の家族に手を出すな」

 低くよく通る声で彼がそう言った瞬間、クレエラの身体は小刻みに震え始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ