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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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55-102


 優雅は違和感を感じながら、震える手で胸元を押さえた。

 その手はみるみる内に赤く染まっていく。そして、優雅は口から血を吐き、その場に倒れ伏した。

「…………え? 父さん……? 父さぁああああん!!」

 その一部始終を見ていた優真は慌てて優雅の元に近付き、体を抱き起こすが、そんな彼の耳に声が届いた。

「離れてください、雨宮優真様」

 その聞き覚えのある女性の言葉に優真は鋭い視線を向ける。そこにはかなりの数の眷族を引き連れた天使がいた。

 その天使は『神々の余興』においてマイクを持って観客を盛り上げていた天使クレエラだった。

 だが、その手に握られたものはマイクなどではない。

 銃口から硝煙をたちのぼらせたライフルを彼女は、優真の方に向けていた。

「てめぇ……それはいったいどういうつもりだ?」

 怒りを露にした優真の質問に、彼女は顔色一つ変えない。

「どういうつもりもなにも、我々は敬愛すべき主の命を脅かす者を殺しに参っただけです」

 その言葉を聞いた瞬間、優真の怒りは更に一段階強くなるが、そのタイミングで優真の腕が赤く染まった優雅の手に握られる。

「……もう……いい……」

「父さん!!」

 優真は優雅の方に心配そうな表情を向けるが、優雅はなにかを諦めたような表情を向けていた。

「……お前まで巻き添えになる必要はない。……お前は何も悪くない……だから、神の怒りなんてかうもんじゃない……」

「その通りだ」

 その背筋まで凍りそうになるような威圧感は、優真の背後から聞こえてきた。

 そして、優真は無意識にそちらを向いた。

 そこに立っていたのはエメラルドグリーンの長髪と金色の眼が特徴的な男だった。

「……創造神……様……」

 優真の反応を見て、創造神は小さく笑った。

「娘の眷族筆頭よ、此度の戦いは大義であった。だが、その者が言うように、わしの敵に回るというのであれば話は別だ。……どうする?」

 その質問に優真の手がわなわなと震える。

 そして、歯を軋らせ、自己の感情を露にした。

「……どうするだぁ……? んなもん決まってんだろ! 大切な父さんは傷付けさせないしお前らには絶対に殺させない!! 俺と父さんの戦いを邪魔すんじゃねぇ!!!!」

「殺れ」

「御意」

 冷めた眼差しを向ける創造神は、傍にいる天使に命令を下した。次の瞬間、彼女は消えた。

 そして、優真の視覚外から彼女は優真を襲おうとした。

 だが、そこは()の視界内だった。

「【死の交換(デストレード)】」

 その言葉の直後、天使クレエラの持つ剣は深々と肉体に突き刺さり、赤い液体でその手を赤く染めていく。

 しかし、手応えを感じたクレエラは怪訝そうな顔を見せた。

「……ちっ、まずは一人目……」

 彼女は舌打ちをして、剣を引き抜いた。

 その一部始終を、優真は子どもを司る女神の傍で見ていた。

 そして、刺されたアルゼンの体は、地に倒れ伏した。


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