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その決意はもう誰に止められても揺らぐ気はなかった。
だが、反対しているマーカスがそれを許すはずがなかった。
「駄目だ! 君が行ってはーー」
「俺が行ってこの村を巻き込むっていうのなら、俺を追い出してくれ! あなた達には世話になった。……だが、それだけはどうしても聞けないんだ。もし、彼女を見捨ててこの村に残ったとしても、俺が俺を一生許せなくなる。シルヴィからあの話を聞いた日、心に決めたんだ! 彼女から笑顔を奪おうとする奴は、どんな奴でもぶっ飛ばす。彼女が助けを求めていようが、迷惑に思おうが関係ない。俺が彼女を守りたいと思ったからやるんだ!」
その真っ直ぐな瞳が向けられたマーカスは優真から目を逸らす。
「…………わかりました。ユウマくんとシルヴィくんを村から永久追放とします。…………二度と村に戻って来ないでください……」
その言葉に一番驚いていたのはライアンだった。
「おい! それでいいのかマーカス、ユウマ君も!」
「お止めなさいライアン」
彼らを必死に止めようとしていたライアンを止めたのは、意外なことにハルマハラだった。
「……ハルマハラさん。……だがよう、あんたはいいのか?」
「弟子の旅立ちを喜ばない師なんていませんよ。彼には、この数ヶ月で教えられることは全て教えました。彼自身が決めたというのなら、口出しはしません。……ですがユウマ君……シェスカちゃんはどうするのです?」
優真はその言葉ではっとなって、その少女の方を見た。
そこには動かなくなったシルベスタを揺らして泣いている少女がいた。
「ばあちゃ……起きて……一緒にご飯たべよ? ……ねぇ起きてよ……シェスカのこと嫌いになったの? ……ばあちゃ……」
シェスカの泣いている声が自分の胸を締め付ける。
そのことを言われるまで、考えもしなかった。
シェスカは大好きな祖母を失ったのだ。シルヴィもいなくなった今、彼女は一人になってしまった。
それなのに俺は、言われるまでシェスカのことを見ようともしていなかった。
シェスカが婆さんの傍にいたことを気付けなかった。あんなに涙を溢して泣いているのに気付けなかった。
彼女が婆さんにかけていた言葉ですら、気付いていなかった。
優真は泣いているシェスカの元に歩み寄り彼女を抱き寄せる。するとシェスカは俺の服を掴んで大声で泣き始めた。




