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「……え? ……なんであれが今更……」
優真はアルゼンの言葉に困惑するが、それ以上に焦っていたのは優雅の方だった。
「やめろ!! あれは優真が知らなくていい話だ!!」
その焦り方は異常と言わざるを得なかった。だが、アルゼンはその口を止めるつもりがない様子だった。
「……私はあの時の優雅の姿が見てられなくてね。炎を司る男神の近辺を調べてたんだ。そこでわかった。雨宮優真、君をあの日襲った男は炎を司る男神の指示で地球に行っていた彼の眷族筆頭だったんだ」
その事実を聞いた瞬間、優真は手に持っていた刀を落としてしまった。
「どういう……こと……?」
優真がそう尋ねたのは、父親に対してだった。
優雅は諦めたかのようにうなだれ、全てを話す姿勢を見せた。
「……炎を司る男神は、地球を支配しようと動いていたらしい。俺と優真はそれに偶然巻き込まれただけだったのだ。当然、そんな話を聞けば俺も怒るさ。あいつらが地球に手を出そうとしなければ……俺は、家族と離ればなれにならずにすんだんだからな……だが! 俺は自分が殺されたことより、息子が巻き添えにあったことがただただ許せなかった!! それどころか!! あいつらは失敗してもなお、再び侵略を行おうとしていた!! ……もし、あいつらが目撃者の優真を襲ったら? もし、今度は二人を狙ったら? 今度は誰が俺の家族を守れるって言うんだ!! ……だから俺は、あいつらを殺す為にアルゼンと手を組んだ。だが……お前にだけは知られたくなかった……」
そう言うと、優雅は優真を見た。
「だってそうだろ? 俺は家族を守る為に一つの世界を滅ぼす手伝いをしようとしている。たった一人で勝てないから彼らの力を借りるしかなかったし、彼らの力を利用したりもした。かっこ悪いじゃないか……お前らを理由にするなんて……」
「かっこ悪くなんかない!!」
その言葉に、優雅は驚いたような表情をしていた。そんな父の姿を見て、優真は涙を浮かべながら更に言葉を続けた。
「俺の父さんは世界で一番かっこいい父さんだ! 死んでも、人としての人生を歩めなくなっても、それでも遠く離れた家族を護ろうとしてる……そんなかっこいい父さんがかっこ悪い訳ないだろ!! 確かに、父さんがそんなことをしているのに賛成は出来ない。この世界の関係ない人達を巻き込んで、自分も死のうとしている父さんを肯定なんか出来ない! だからなんだ! 俺は胸を張って言ってやる!! 例え父さんが自分のことをかっこ悪いとか思っていても、例え世界中の誰もが父さんを悪人だと罵ったとしても……俺にとって父さんは、世界で一番かっこいい父さんなんだ!!」
そう言った優真の表情には笑みが刻まれており、それを見た優雅は小さく笑った。
「世界で一番か……こんな俺が……か……」
そう言って優雅が立ち上がった瞬間、1発の銃声が鳴り響いた。




