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「優真。今すぐ神の眷族を辞めろ!! 俺の仲間になれとは言わない。だが、そのままだとお前はきっと後悔する。俺は、優真に俺と同じ道を辿ってもらいたくないんだ!!!」
その言葉に、優真は開きかけた口を閉じ、震える手で刀を父親に向けた。
その姿を見て、優雅は辛そうな表情を見せた。
「……なんでだ……なんでだ優真!! 神は自分と自分の周りのことしか考えていないんだぞ!! 自分の気分次第で人の命も奪うし、地上を勝手に踏み荒らす……そんな存在にまだ付き従うというのか!!」
「…………」
「まさか自分の信じるそいつだけは違うとでも思っているのか? それは幻想に過ぎないんだぞ!」
「……別にそんな訳じゃ……」
「じゃあいったいどういう了見なんだ!! そいつは俺の伝言を無視してお前を自分の眷族にしたんだろ? 俺はこっちの世界に来ないよう手紙に書いたんだぞ! まさか知らないってことは……」
「そんなこと知ってる。つい最近だったけど……ちゃんと知ってる。こいつが父さんからの伝言に従わなかったこともそのせいで万里華までこっちに来たことも知ってる……」
「……万里華? ……万里華ちゃんまでこっちに来てるのか!?」
「うん……でも、あいつはあいつ自身の意思でこっちの世界に来たんだ。それに俺もだ」
「……どういうことだ?」
「俺も俺自身の意思で子どもを司る女神様の眷族筆頭をやってるってことだよ!! それは他ならぬ俺自身が選んだ選択なんだ! だから、例え父さんの言葉であっても、俺は辞める気はないよ!」
優真は覚悟の定まった眼差しを向ける。
その目からは、己の選択を曲げないという強い意思が込められていることを、優雅は早々に察した。
そして、優雅は視線を下に向け、優真に向かってこう告げた。
「ならもう……こうするしかないな……」
その言葉の直後、優雅は発砲した。
優雅が向けた銃口の先、そこには子どもを司る女神が立っていた。
自分に向けられた時の対策なら万全だった優真だが、その予想外な攻撃に一瞬対処が遅れてしまう。
今まで優真に殺意を向けなかった優雅が突然殺気を見せたことで構えすぎたのだろう。
しかし、優真には子どもが襲われた時に発動する【勇気】がある。例え、対キュロス戦の時のようにすぐ解除されようと、一瞬でも止まれば対処はできると踏んでいた。
だが、何故か【勇気】は発動しなかった。
銃弾の放たれた直後、一つのうめき声がこの空間に響き、深紅の血が辺りに飛び散った。




