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「な……なんで……」
思わず出てしまった言葉に、父さんが反応する。
「そうだよな! お前もそう思うはずだ! あの二人は炎の神を信仰していた訳ではないが、悪事を働くような奴らじゃなかった! だから俺も聞いた! なんで二人を殺したのか……ってな!」
そう言った瞬間、アルゼンが辛そうな表情を見せながら目を伏せたのを、俺は見逃さなかった。
「あいつは、麻雀で他の神に大敗したその腹いせで二人を殺しやがったんだ! 八つ当たりに俺の体を使ってモンスターを焼き殺しているのを見られたからという理由でついでに殺したそうだ! 信じられるか!! そんなクソみたいな理由で俺は神に仲間を殺させられたんだぞ!!!!」
父さんの怒る気持ちが少しはわかったような気がした。
自分の仲間を殺されることがどれ程辛いことか、俺にだってわかる。その殺した相手を憎む気持ちもわかる。だが、父さんはそれだけじゃないんだ。
父さんは神の勝手な都合で、仲間を自分の手で殺させられたんだ。それが、どれ程辛いものか、経験したことのない俺にはわからない。ただ、一つ言えることがあるのだとすれば、あの優しかった父さんをここまで激変させる程の怒りを、炎を司る男神が与えたということなのだろう。
◆ ◆ ◆
荒い息を吐いていた父さんが、昂った感情を落ち着かせて立ち上がる。その右手には、落とした銃が握られている。
「叩きつけられた真実を悔いながら三日三晩俺は二人の焼け焦げた遺体を抱き締めて泣いていた。あんなクソ野郎に感謝なんかしていた自分を責めたよ。そもそも俺が二人に近付かなければこんな未来はなかったんだ。……でも、時間なんてものは戻らない。運命は変わらない。俺が彼らに近付いた時点でこうなることは決まっていたんだ。……もう一人の仲間にも見放され、俺は再び一人になった……そんな時に、俺はアルゼンに出会ったんだ。こいつは神との約束を守る為に神の仕事をこなしていた。だが、俺のせいで二人の魂がさ迷い続けていると言われた。俺は拒んだが、俺はアルゼンに呆気なく引き剥がされた……でも、それで良かったんだろうな……ケビンもシルクも、自分を殺した相手と一緒にいるなんて嫌だったろうしな……」
そう言った父さんは俺に再び拳銃を向けてきた。




