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優真と優雅の親子対決は、シンプルなものになっていた。
優雅の放つ炎の弾丸を、優真が紅華という名の刀で斬る。
互いに1歩も動くことはない。その行動の意味するところは牽制か迷いか、はたまた何かの作戦なのか、誰も知る由がなかった。
「……面白い戦い方だな。創造神の眷族筆頭キュロスとの戦いを見て思ってはいたんだが……優真の戦い方は自分から攻撃を仕掛けるつもりがないんだな……」
「……そうとは限らないよ……」
優雅の言葉に優真がそう答えた瞬間、優真の姿が一瞬にして消えた。
しかし、優雅の目は彼を捉えていた。
優雅の銃と、優真の刀が交差する。
「……マジか……」
そう言いながら、優真は距離を取った。
初見で十華剣式の壱の型をいとも容易く防いだその速さにも驚かされたが、相手が消えてからの状況判断、また、それに対する冷静な対応能力に、優真は驚かされた。
なぜなら今の一撃は、【剛勇之王】によって、数千倍にはね上がった攻撃力とスピードによるものだからだ。
それを涼しい顔で受け止められた事実に驚かないはずがなかった。
「なかなかやるじゃないか。さすがはあのキュロスに勝っただけのことはあるな」
「……よく言うよ……そんな簡単に受け止められる一撃じゃないってのに、余裕で受け止められるとか……」
「いやいや、結構驚かされたぞ? この俺が避けることすら出来ずにこの銃で防ぐしかなかったんだからな……」
「銃で防ぐって……この刀は神器ですら斬るってのに……ってことはやっぱりその銃は神器か……」
優真は優雅の持つ銃に視線を向ける。
装飾は黒いフォルムに赤い線が入った拳銃であった。
「残念ながらハズレだ」
優雅の答えに優真は驚いたような表情を見せた。
「神を殺す為に改造はしてあるが、この銃は元々俺の友人が使っていたものだったんだ」
その言葉に、優真は驚きしかなかった。
優雅の目的が世界滅亡に繋がることをあらかじめ時空神から聞いていた優真にとって、優雅が自分の友人のいる世界を滅ぼそうとしているのが信じられないのだ。
それを見透かされたのか、優雅は小さく笑った。
「これの持ち主の心配ならしても無駄だぞ?」
「……え?」
その言葉に、優真が驚いて声を漏らす。
そんな優真を見て、優雅は彼にこう告げた。
「俺が殺したからな」




