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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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 彼が限界だということは、すぐにわかった。

 目の焦点はあっておらず、ふらふらと身体をよろめかせながら、彼はパルシアスの前に立つ。

「……なんで……」

 パルシアスは、彼の握られた右拳を見て、悔しそうに、そう呟いた。


「勘違い……すんな……」

 その言葉で、パルシアスはバラドゥーマの表情を見た。

 その目は、先程までとは少し違うように感じた。

「自分が……もうすぐ死ぬってのは、自分が一番わかる。俺みたいな奴が死んだところで、奪ってきた命が生き返る訳でも、犯してしまった過ちが許される訳でもない。……だが、俺が納得できないんだ!」

 力強くそう言ったバラドゥーマは、自分の右拳を顔の前まで持ってきて、悔しそうな表情を見せた。

「俺は許されてはならない過ちを犯した。力を欲し、俺を支えてくれた仲間……いや、かけがえのない家族をこの手で殺してしまった!! キュロスやパルシアスに対して、殺意を込めた拳を握ってしまった!! だから……これは俺のエゴだ! お前が俺をここに放置しようと、俺をこの場で殺そうと、俺はお前を恨まない。ただ、最後に握った拳があんなんじゃ、あいつらに申し訳たたねぇ……」

 そう言ったバラドゥーマの辛そうな表情は、とても演技には見えなかった。

 その表情を見た瞬間、パルシアスは頭をかきむしりながらため息を吐くと、しょうがないなぁ、と嬉しそうに小声で呟いた。そして、その場から立ち上がり、背中を見せながら彼から少し距離を取った。

 そして、驚いた表情を見せるバラドゥーマに対して、身体ごと向き直った。

「バカだな~、バラドゥーマは! 僕がそれを受けない訳ないじゃないか!!!」

 パルシアスがそう言った瞬間、彼から神々しい白銀色のオーラが、覇気と共に放たれた。

 それは、並の眷族や眷族筆頭であれば、間近にいるだけで失神するほどのものだった。

 だが、バラドゥーマはそれを見た瞬間、小さく笑い、彼に聞こえないよう短く一言だけ、こう呟いた。

「……ありがとよ……」

 そして、バラドゥーマもまた、赤銅色のオーラを纏い始めた。


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