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10-11


「……ユウマ君……申し訳ない」

 ハルハマラは謝るが、その言葉は優真に届いていなかった。大まかな話を聞いた優真の中では後悔と自分を責める言葉だけが頭を支配していた。

(なんで……なんで俺がいない時なんだ。俺を探しに来たんだったら、他を巻き込むなよ! ……くそっ! 俺がもっと早く帰っていれば……何時ものように、家で彼らが来たことを知っていたら、シルヴィは見つからずに済んだんだ。…………俺のせいだ。俺のせいで婆さんは死んで、俺のせいでシルヴィは捕まった。俺のせいで、彼女達は平和な生活を奪われたんだ……助けに行かないと!)

「助けに行かないと……とでも思ってそうな顔ですね。非常に心苦しいのですがそれは許しませんよ」


 助けに行く決意をした瞬間、後ろから声がした。振り返ってみると、そこにはシェスカとライアンさんを引き連れていたマーカスさんがこちらへと歩を進めていた。


 マーカスさんは決して村人を見捨てるような人じゃない。村長代理を務めて、病弱なマーカスさんの代わりに村人をまとめていたシルベスタさんには恩義すら感じていると聞いていた。

 よりにもよってそんな彼がその言葉を告げたことに、俺は自分の耳を疑った。

「……どういう意味ですか? やるかやらないかを決めるのは俺でしょ?」

「そうですね。しかし、今回に関してはあなたが動けば村の者も全員巻き添えをくらいます。シェスカくんやユウマくんには酷ですが、彼女を助ける訳にはいきません」

「……シルヴィを見捨てるっていうことですか? ……それ本気で言ってんのか!!」


 優真の顔には怒りの色が浮かび、その目はマーカスを萎縮させる。

 シルヴィを助けないと決めた彼の言葉に、優真は自分が自分でいられなくなるような感覚になる。

 だが、マーカスはそんな様子の優真を見ても意見を変えるつもりはなかった。

 マーカスは優真に勢い良く頭を下げた。

「本当に申し訳ない。……わかって欲しいなんて言わない。この村を守らなくてはいけない立場にある私にとって、彼女一人の命と、村人全員の命を天秤に乗せれば、後者をとるしかないんだ。……全ては全てを守る力がなかった私の責任だ! 恨むなら私を恨んでくれ!」

 

 優真は顔を上げた彼の頬を一発殴った。

 病弱な人間の体は簡単によろめき、マーカスの体を彼の隣にいたライアンさんが受け止める。

「……あんたの立場はわかる。これが俺のわがままだってことも。……でも……それでも納得なんかできない! 理性ではわかっていても、俺の心があんたを許せない。シルヴィがひどい目に逢うのを俺は見たくない。ぼろぼろの体で、その首に奴隷の首輪をつけ、赤ん坊を抱きしめて帰ってくるシルヴィの姿を見たくなんてない! だから! そんな危険な場所に送ったあんたを許せねぇんだ!」

 

 優真はマーカスに向かってそう言うと、視線をシルヴィの祖母に向ける。その目を閉じた顔を見ると、心の奥底から、怒りと、悲しみがこみ上げてくる。


 婆さんをあんな目にあわせたやつらを許す気はない。

 婆さんの大切な人を奪ったやつらを許す気なんてない。

「だから絶対……俺がシルヴィを取り返す!!」

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