55-89
バラドゥーマの手によって、高濃度のエネルギー弾は神をも殺せる一撃へと昇華していく。
しかし、それはいつまで経っても放たれることはなかった。
「……これまで……みたいだね……」
哀しそうな眼差しを見せたパルシアスが、うずくまったバラドゥーマを見て呟く。
彼は苦しそうに咳き込み、何度も血の塊を口から吐き出していた。
「……いったい……何しやがった……」
バラドゥーマは何がなんだかわからない様子で、パルシアスを睨み付ける。
だが、パルシアスは逆に、何かに対して同情の眼差しを送っている。
「僕は何もしてないよ。ただ、君が無知だっただけさ……」
それを聞いた瞬間、バラドゥーマが怒りに任せて怒鳴りつけようとするが、再び血の塊を吐き出してしまう。
「……破壊神様の眷族達は君を止めていたはずだ。破壊神様は君にそれをさせないようにしていたはずだ。君が少しでも彼らの話に耳を傾けてさえいれば……こんな結末にはならなかったというのに……」
「……何の……話だ……」
バラドゥーマの声は既に、掠れていた。
それを見たパルシアスは、バラドゥーマに対して鋭い目を見せる。
「彼らが君を止めていたのは自分の命欲しさだけじゃない。……君に死んでもらいたくなかったからさ!!」
その言葉は、バラドゥーマに衝撃を与えるには充分な内容だった。
「何千年も昔……先代の子どもを司る女神様は、地上にいた一人の子どもを見捨てた。理由はその子どもが上級神の怒りを買ったから……でも、誰が見てもその子どもに非なんてなく、当然彼女の王、ヘラクレスはその判断に猛抗議した。神には神の立場があるし、ヘラクレスの方にも王として譲れないものがあった。やがて、一つの悲報が創世神の三柱の耳に入る。ヘラクレスが子どもを司る女神様を殺し、その力を得たという……そんな悲しい情報が、僕らの耳にも入ったんだ……」
バラドゥーマには、その話が自分にどう関係してくるのかがわからなかった。しかし、口を挟めるような雰囲気ではなかった。




