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轟音がその空間に響き渡る。
パラパラと砕けたコンクリートが地面に落ち、元々コンクリートのあった場所には、黒髪の男性が叩きつけられていた。
「……くっそ……あんなん……いったいどうしたらいいんだよ……」
今にも閉じそうな眼を必死に開けながら、彼は剣を構えながら迫ってくる男を見てそう吐き捨てた。
再びパラパラとコンクリートが地面に落ち、優真がアルゼンの剣をかろうじて避けてみせる。
地面を転がり、すぐに立ち上がる優真。その表情からは、焦りの感情が見受けられた。
優真が発動している【剛勇之王】は、その者が出せる力の100パーセントを引き出す効果を持っている。そのうえ、優真の【ブースト】を取り込んだことにより、今の優真はあらゆる能力値を10000倍にされている。
いくら制限時間が無くなったとはいえ、常時10000倍で戦っては守りたい仲間達のいるこの本拠がすぐに崩壊してしまう。
だからこそ、彼は今、必死にセーブして戦っている。
スタジアムで行った時のような全身全霊ではなく、力を完璧に制御し、それでいて最大限の力を用いて勝つ。
それこそが、自分の完全勝利に必要な絶対条件であった。
しかし、相手が悪すぎた。
優真が戦っているのは、死を司る男神の力を喰らった男、アルゼンなのだ。
神を殺し、王の資格を得た彼の使う特殊能力【死滅之王】、その効果が生み出した剣は特殊な効果を持っていた。
相手の生命力を奪う。
それにより、優真は交差する刀越しにその効果を身に受けていた。
だが、優真の【剛勇之王】が抵抗してくれている為、優真は体力を奪われる程度で済んでいる。とはいえ、彼の剣が奪う体力は尋常じゃない。このまま戦えば、優真が負けることは自明の理であった。
極度の緊張感を感じながら、優真はアルゼンとの剣戟に応じる。これまで数多くの戦いを行ってきたが、一太刀一太刀にここまで神経を磨り減らされたのは、初めてかもしれない。
まともにもらえば死ぬ。
そんな考えが頭を過りながらも、優真は退くことなく戦い続ける。
自分の守るべき者をこれ以上危機に晒させない為にも、優真は剣を振るい続ける。
だが、戦いの終息というのは必ず訪れる。
それを証明するかのように、アルゼンが双剣を重ね合わせた。
私って計画性ないんだなってつくづく思いますよ。これ本来は一回目に投稿する予定だったのに……




