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その若い兵士の後ろには同じように不満そうな顔を見せる八人の兵士がいた。
「……なんだお前達は? 呼んでないぞ」
「いやいやそりゃないっしょ。ここで犯すのをやめるって、あんたバカか~? 俺達はさ~、この女見た時から体が疼いて仕方ねぇんだよ。こんな上玉あんた一人で楽しもうなんて虫がよすぎるぜ? それにこいつらを見逃すだ~? こんな女一人見つけられないような無能集団皆殺しでいいだろ!」
その兵士は髪を染めているのか珍しい金色の髪をしていた。
しかし、他の兵士達や村人が注目していたのはそこではなく、徐々に不機嫌な顔になっていくベラキファスだった。
「おい新兵…………貴様誰に向かってその口を聞いてやがる?」
「お前だよ、お・ま・え」
なめくさったような態度をとる10代半ばくらいの若い新兵がそう言った次の瞬間、彼の体が一瞬で肉塊になった。
赤い血を辺りに撒き散らし、さっきまで動いていたはずの人間が、そこかしこに肉の塊となって散らばる。
「…………え?」
その一部始終を見ていた少女の顔は恐怖に染まり、甲高い悲鳴を上げる。
「な……何やってんだあんた!? そいつは子爵様の息子だぞ!!」
若い兵士の一人が不機嫌な顔を向ける将軍にそう言うが、そう言った兵士の表情は怯えきっていた。
「新人教育がなっとらんな。雑魚に舐められた将軍など、誰にもついてこぬだろう。……せっかくだ。ここで思い上がった新兵を黙らせるのも私の務め。さぁ、どこからでもかかってくるがいい」
怯えきっていた兵士達は肉塊を見ると、腰に携えていた剣を引き抜いて将軍に向けるが、ベラキファス将軍の圧倒的な威圧に震えるだけだった。
やがて、それを見かねたベラキファスが「そっちから来ないというのなら……私からいこう」と言うと、懐から銀色に輝くナックルダスターを取り出し、両手にはめた。
次の瞬間、ベラキファスは強く地面を蹴り、剣を向けた新兵達に容赦なく顔面パンチを食らわせていく。
若い兵士8人は、全員ベラキファスに瞬殺された。
「……これが『鉄拳』ベラキファスですか。……いやはや予想以上の強さですね……腕をなくしたのは実にいたい……」
死体処理を部下に頼むベラキファスを見て、ハルマハラはそう呟いた。




