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ようやく救援に駆けつけた麒麟と4人の眷族達は、そこにいた大地の女神のもとまで駆け寄る。
「お前達は先に行ってあの娘の援護にまわりなさい」
麒麟の言葉に4人の眷族達は跪いて頭を垂れる。そして、援護に向かった彼らを見送り、麒麟は大地の女神に声をかけた。
「こちらにわしらの仕事はないようじゃな」
「はい、うちの自慢の娘が助けてくださいましたから」
そう答えた大地の女神は、どこか誇らしげだった。
「ふむ。聞きたいことは色々あるが、とりあえず先に襲撃者を殲滅させるとするかのぅ」
そう言うと、麒麟は視線を大地の女神から、彼女が膝枕している少女へと視線を向けた。
「それがお主の選択だと言うのなら、わしは咎めぬさ」
「ありがとうございます」
最後に小さく笑い、麒麟はもう一つの戦場へと向かった。
◆ ◆ ◆
ハナが目覚めさせた特殊能力【大地之王】は、大地や植物を使用し、私兵を造り出す能力であった。
その人形達は1体1体がハナの身体能力を要しており、特殊能力は使えないものの、学習能力まで完備されていた。
土と植物がある限り、その数は増え続ける。
まさに最強の軍隊である。
「……女神……様?」
目を覚ましたハナは、自分が膝枕されているという状況に困惑しつつも、なんとなく今はもう少しだけ甘えたい気分になり、怒られるまではそのままでいようと思った。
すると、大地の女神が口を開いた。
「昔……ハナちゃんと同じような子が僕の傍にいたんだ。僕は彼女を眷族筆頭に据え、王の力も与えた」
その雰囲気は、いつもより重苦しく、とても口を挟めるような状況ではなかった。
「……でも、死んじゃった……もう覚えてないくらい昔に、神喰らいをした眷族筆頭の手によって……」
大地の女神は涙をポタポタと流し、ハナの頬にも落ちてきた。
「もっとずっと長く一緒にいられると思ってた……もっと色んな世界をガイアには見てもらいたかった……僕はあの子の主神だったのに……結局……彼女を守ることが出来なかった……」
その話を聞いているハナの目からも、いつの間にか涙が流れていた。
「……だからなんだ。ハナちゃんがガイアみたいになったら嫌だと思ったから、僕は君をずっとあそこに閉じ込めていた……ごめんね、ハナちゃん……僕のわがままで君をあそこに留め続けてしまった……結局僕は、子どもを司る女神と同じ苦しみを味わわせてしまっていたんだね……」




