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鬼気迫る表情で彼女がその言葉を告げた瞬間、先程までとは比べ物にならない程の覇気と神々しいオーラが放たれる。
それは、見間違いでなければ、絶対にあり得ない光景であった。
神々が、それを他の眷族に与えることなんてあり得ないと言われていた。
眷族からの信頼と神からの信頼が一定水準を越え、なおかつ神自身がそれを与えると判断しない限り、それは行われないからだ。
だからこそ、ネビアは目の前で起こっている事態に目を疑った。
神々しい光がその光量をおさえた時、彼女の体に傷は見受けられなかった。
血の流れた痕が消えた口で、彼女は次の言葉を告げた。
「【大地之王】」
その言葉で、ネビアは確信してしまった。
彼女が『王の領域』に到達してしまったのだということを。
◆ ◆ ◆
立ち上がったハナからは、霧の効果が見受けられなかった。
そして、ネビアはぶつくさと言葉を紡ぎ始めた。
「……大地之王ガイア……この世界で大地の女神が初めて王に選んだ眷族筆頭の名……つまりは私のタルタロス同様、脅威的な力を持っている可能性が高い……いや、大地の女神が神である以上……」
そこまで呟くと、ネビアは大きく息を吐いた。
そして、ハナ相手に余裕の笑みを見せた。
「まぁ、別にどうでもいいな。今更その領域に到達したところで、お前じゃ私には敵わない。所詮、その程度の力ではお前が苦しむ時間が増えるだけなのだ!!」
ネビアがそう言った瞬間、ハナが手に持っていた神器アナプティクシを神速の速さで振るった。
次の瞬間、ネビアの頬から少量の血が流れた。
しかし、それだけではない。
床全体を覆っていた大地がボコボコという不快な音を立てながら、徐々に何かの形へと形作っていく。
そして、不快な音がやんだ時、ハナの周囲には土人形で造られた軍隊が出来ており、その先頭には緑色の蔓で造られた人形も出来ていた。
「確かに私一人じゃあなたには勝てないけどさ、一人じゃなくなった私なら、その確率は0じゃなくなる。皆が生きるこの愛おしい世界を守る為に、私はあなたを倒す!!」
ハナがそう言った瞬間、泥人形達は、ネビアを攻撃するために突撃を始めた。




