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ネビアは霧に紛れながら攻撃するものの、それらはハナの蔓によってことごとく防がれる。
そんな状況下でネビアがイライラしていると、ハナが見えないネビアに声をかけてきた。
「まだやめないの? あっちのSランクモンスターは残り5体になったよ?」
彼女の言葉を聞いたネビアは、視線を離れた位置で行われているもう一つの戦いに目を向けた。そこには銀色の動かない像と化したエンペラーグリズリーの姿があった。
(……このままでは当初の目的すら難しくなってしまう……だが、ここで撤退しては、私をあの場所から救い出してくれた者達に申し訳が立たない……!?)
そんなことを考えていると、ネビアは迫り来る強大なオーラを感知した。
ここまでずっと拡散させ続けた霧が、その反応を示したのだ。
その存在は、待ち伏せていたモンスターと戦闘を開始しているが、厄介なことにかなり強い。
(……モンスターを殺すなという命令さえなければ……霧化の呪いを付与することが出来たというのに……)
迫り来る存在は、神喰らいしたネビアよりも強いと言わざるを得なかった。
相当上位な神なのだろう。
このままでは逃げることすら不可能になる。
「……力の温存はもう……諦めた方が良さそうですね……」
ネビアはそう呟くと、霧に紛れる力を解除し、ハナの前に姿を現した。
いきなり姿を現したネビアに対し、ハナは不審の目を向ける。
こちらは相手が見えないという理由で、正確な攻撃を繰り出せず、相手も相性の問題で攻めきれない。
その為、一種の膠着状態に陥っていた。
それなのに、ネビアはわざわざ自分から姿を現してきた。
その理由が、ハナにはわからなかった。すると、ネビアが先程とは異なる雰囲気を放ちながら、口を開いた。
「貴女は言いましたね。私と貴女は相性が悪いと」
「……そうだね。私の【成長】は他者から養分を吸いとって植物を成長させるっていう危険な能力もある。でも今回はその力が項をそうしたよね~」
「その前提が間違っているんですよ」
その言葉に、ハナが首を傾げる。
「例え数年前まで貴女が強かったとしても、今の私に勝てはしない。相性とはそもそも同レベル同士の戦いでしか意味をなさない! 圧倒的に格が上の私と、王の力すら持たない貴女とでは……」
そう言いながら、ネビアは左手の中指で眼鏡を正し、もう片方の手をハナに向けた。
「天と地程の差があるのですよ」
そう言われた瞬間、ハナの口から血が吐き出された。




