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しかし、その梟はメイデンの見たことがある動物でもモンスターでも無かった。
普通の梟と同じ大きさではあったが、見た目はファントムオウルという亡霊を操るAランクモンスターによく似ていた。
しかし、圧倒的に体躯が小さかった。
ファントムオウルは小さくても、3メートルはあり、普通のサイズなら10メートルは優に越える。だが、目の前にいる梟はせいぜい50センチ程度。おそらく特別な過程で生まれた変異種の類いなのだろう。
もし、ファントムオウルであるならば、気配を消すこともあのかまいたちにも納得はいく。だが、この梟の目は赤くない。要するに、この梟は飼い主の意向に逆らってメイデンを攻撃したのだ。
この梟がSランクモンスターを操っていた存在で間違いないのだとメイデンは直感で確信した。
(……こいつさえ倒せば全て終わり……)
そう思ったメイデンが手に顕現したエクスキューショナーズソードを振り上げる。
その時、後方から一言、こう聞こえた。
「オーちゃん!!!」
その声で振り下ろそうとする剣を寸でのところで止めた。しかし、そうして正解だったのだと、メイデンは確信する。
鎖で拘束された梟に、ミナが駆け寄り、そのまま抱きついたのだ。
少女は抱きついたまま泣き始め、梟はその少女に目を向けていた。
「すまない……また、君を護れなかった……」
それはテレパシーによる謝罪だった。その事実に、メイデンは内心驚いていた。
本来、モンスターや動物がテレパシーを発することはない。唯一使えるとすれば、Sランクに分類されるモンスターだけだろう。
そのうえ、ここまで流暢に喋れるとなると、数はかなり少ないだろう。だが、この状況ではありがたい能力だった。
「……あなたはファントムオウルなの?」
そう訊くと、梟はメイデンへ鋭くなった目を向けた。
「ワレをあのような下等種族と同列に見なすな。ワレの真名はワイズオウルことオーちゃんだ。二度と間違えるな!!」
鎖で縛られているにもかかわらず、ワイズオウルと名乗ったそのモンスターは、上から目線で接してきた。
しかし、今までの眷族達も大概そんなものだった為、メイデンも特に気にしはしなかった。
メイデンは首を傾げて、長い年月で見てきた知識を活用してみるが、ワイズオウルという名に聞き覚えはなかった。




