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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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「さよならだ」

 その言葉が終わるのと同時に、1発の銃声が鳴り響く。

 右側頭部に至近距離で炎の弾丸を撃ち込まれたハルマハラは、抵抗することすら許されず、そのまま横に倒れた。


 その姿を一瞥した優雅の表情は、どこか哀しげなようにも見えた。

 そして、雨宮優雅はその重い足取りで、カイザルクと合流する為に扉へと向かった。

 そんな彼の背中に、不可視の弾丸が撃ち込まれた。

 受けた圧力は相当なもので、彼の体は悲鳴をあげ、口から赤い液体が吐き出される。

「なっ……んだこれ……!?」

 なんとか膝をつくだけで済んだ優雅ではあったが、骨や内臓の修復には時間がかかる。後数分はおとなしくする必要があった。

 しかし、そうも言ってられない状況になりつつあった。


「ようやくこちらも久々の力に慣れてきたっていうのに、帰るなんてあんまりではありませんか? もう少し遊んでいきましょう?」

 そう言いながら、ハルマハラは手に握ったレイピアを優雅の方に向けていた。

 神喰らいで最大限に強化された弾丸だったはずなのに、ハルマハラには効いていないように思えた。

「久しぶりですので、少々至らぬ点はあるでしょうが、それでも貴方に勝つ為、この力を改めて使わせていただきましょう」

 そう言うと、ハルマハラは顔の前でレイピアを縦に構えた。

「敬愛する風の神よ。私に今一度貴方のお力を使わせていただきたい。【風鬼之王(テュポーン)】!」

 その言葉が彼の口から放たれた瞬間、ハルマハラの体から神々しい光と共に、強烈な覇気が放たれた。


 それは、雨宮優雅が目を見開くほどの光景だった。

「……王の……領域……? まだ使える者がいたのか? いや、使えたのか?」

 優雅の考え通り、ハルマハラは元から『王の領域』に到達していた。

 長い年月を生きた彼だからこそ、到達したその境地は、今でこそ数は少ないが、昔はもっと多かった。それこそ、一柱につき一人が当たり前と言われていた。

 だが、多くの眷族筆頭は、大昔に起こった大規模な戦争……神喰らいを行った子どもを司る神の眷族筆頭との戦いで命を落とした。

 その戦いでは、当時の破壊神の眷族筆頭をはじめとした多くの眷族筆頭が神や世界を守る為にその命を散らすも、なんとか神喰らいを行った子どもを司る神の眷族筆頭を撃退。しかし、その被害はそれだけにとどまらず、多くの者が命を落とした。

 それからというもの、神々は王の称号を己の眷族に与えようとはしなくなった。

 与えれば、昔の大切な家族を思い出してしまう。彼らとの記憶や彼らの死を鮮明に思い出してしまう為、使うのを自ら封じていたのだった。


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