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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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 カイザルクの言葉に、優雅は激しく動揺していた。

「……テュポーン? ……ハルマハラじゃないのか?」

「もちろんハルマハラですよ? ただ、眷族筆頭だった頃の名前がテュポーンだっただけです。それに私が眷族として生きていたのはかなり昔のこと。ようやく人間の体になれて、あと少しで天命をまっとう出来ると思っていたのですがね……また、初めからやり直しになってしまったじゃないですか」

 怒りが込められた眼差しを向けられるのと同時に、ハルマハラから尋常でないほどの覇気が放たれた。

 それを真っ正面から受けた瞬間、優雅は冷や汗が背中を伝う感覚を味わった。

「おもしれぇ! あの剣聖とやれるのか! おい炎帝! こいつは俺が……」

「それは聞けない相談だ」

「はぁ!?」

 振り向いたカイザルクは、優雅の姿を見て気圧された。

 それは、今まで感じたことがないレベルの威圧感だった。

 まだ神喰らいを行っていない自分では、勝ち目がない。無意識にそう思ってしまうほど、今の優雅は恐ろしかった。

「ちっ、しゃあねぇな……どうやら、ここには時空神がいやがらねぇみたいだし、俺は時空神をとりあえず捜してくるわ」

「あぁ、後で合流する」

 優雅がそう返事をすると、カイザルクはこの場から姿を消した。


 ◆ ◆ ◆


 ハルマハラと雨宮優雅は互いに一定の距離を保ちながら、その場にとどまっていた。

 一触即発の雰囲気を漂わせており、かつて共に戦った友人との再会が、互いの気持ちを複雑にしていく。

 共に戦い、とある事件をきっかけに解散した二人。

 今の彼は、自分が知っているかつての彼とは違う。

 それがわかっているからこそ、互いに動けなかった。

 そんな状況の最中、ハルマハラが緊張の糸を断ち切るかのような吐息を行った。

 そして、彼は優雅に向かって微笑む。

「私が間違っていました。あの時、貴方を悪人だと決めつけ、何も聞かずに離れた」

 哀しそうな表情で語るハルマハラの言葉を、優雅は黙って聞くことにした。

「あの時の私はきっとまだ、人間という存在を信じきれていなかった。だから、あの現場を見て、自分じゃないと言った貴方の言葉を信じきることが出来なかった。……ですが、私は一人の人間に教えられた。人は大切な者を奪われた時、守れなかった自分を責め、奪った相手を憎む。彼は、あの時の貴方と同じ表情をしていました。……だから、今回は貴方の話を聞こうと思います」

 そう言うと、ハルマハラはレイピアを鞘に収め、真剣な表情で、彼に訊いた。

「貴方は……いったい何故このようなことをしたのですか?」

 その質問に、優雅は即答しなかった。

 そして、少しの時間を要した後、彼は答えた。

「俺は、俺の意思で神々を殺すと決めた。それを邪魔するというのなら、かつての仲間とはいえ容赦はしない!」

 その答えを聞いた瞬間、ハルマハラは辛そうに目を伏せた。

「そう……ですか……残念です……」

 ハルマハラがそう言うと、二人は互いの武器を取り出し、相手に向けた。

「私は、元ファミルアーテのメンバーとして、貴方の仲間として……貴方を殺します!」

 その言葉を合図に、二人の激しい戦闘が始まった。


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