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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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 トキネは立ち上がろうとした瞬間、カイザルクがすぐそこまで来ていることがわかった。

「……俺に勝つなんて最初から無理なんだよ。お前の特殊能力は俺に通用しないし、お前は俺の特殊能力【空弧】を攻略した試しがない……元々、勝ち目なんてなかった。それだけの話だ」

 カイザルクにそう言われた瞬間、トキネの目から涙がこぼれ始めた。

「……私も……殺すんですか?」

 涙声でそう聞かれ、カイザルクは持っていた大鎌をトキネの首筋辺りに置いた。

「俺はお前が気に入っている。お前は俺にも優しい笑顔を見せてくれていたし、周りと同じように接してくれた。それに、同じ元人間だ。……だから、お前も俺と一緒にーー」

「お断りします!!」

 そう言ったトキネは涙目になりながら、カイザルクを睨み付けた。その首筋からは少量の出血が伺えた。

「……結局お前も……俺を否定するんだな……」

 カイザルクは、悔しそうにそう言うと大鎌を振り上げた。

 しかし、カイザルクが大鎌を振り下ろそうとした次の瞬間、一陣の風が吹いた。

「なんとか間に合ったようですね」

 反射的に目を閉じた3人の耳に声が聞こえた。

 その聞き覚えのある声を聞いた瞬間、優雅はそちらに目を向けた。

 そこに立っていたのは、隻腕の老人だった。


 ◆ ◆ ◆


 その老人は右手にレイピアを持っている白髪の剣士だった。

 ここにいるはずがない。ここに来れるはずがない。優雅がいくらそう思おうと、それは現実だった。

「申し訳ない、お嬢さん。少々やらねばならないことがあって遅れてしまいました。後のことは任せて、早くお逃げなさい」

「えっ……え?」

 混乱するトキネの髪がなびき始めた。

「!? 待ちやがれ!」 

 老人の言葉を聞いた瞬間、未だに風から目を守っているカイザルクが、特殊能力【空弧】を発動しようとした。

「申し訳ないが、私はもう、以前の私ではありませんよ?」

 白髪の老人がそう言うと、巨大な竜巻が出現し、老人の背後にいたトキネを風ごとどこかに消してしまっていた。


「ちっ、やり損ねたか……」

 カイザルクは憎々しげにそう言うと、隻腕の老人に視線を向けた。

「くそが!! なんで今更消えた剣聖が出てくんだよ!!」

「……!? おい待て! なんでお前があいつのことを知ってるんだ!」

 カイザルクの口からその名を聞いた瞬間、優雅は血相を変えて、カイザルクの胸ぐらを掴んだ。しかし、カイザルクはそれを強引に外して、ハルマハラの方へと視線を向けた。

「知ってるも何も……あいつは女帝が3位になる直前までファミルアーテの上位だったんだから知らねぇ訳無いだろ!」

「……ファミル……アーテ?」

 信じられないといった表情を見せる優雅に、カイザルクは続けた。

「そうだよ! あいつは初代風の神の眷族筆頭『剣聖』テュポーン。ファミルアーテの3位にまでのぼりつめる程の実力者だよ!!」


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