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10-4

 【勇気】は発動しない。

 発動条件の初ターンは先程終了したのだから。

(……もう一発くる……【勇気】はもうない。……だが、2ターン目以降が雑魚だったのは半年前の話だ!)

 優真は腰に携えていた鞘から刀を引き抜いて、見えない攻撃を刀で打ち落とした。


 【勇気】には与えた神でも予想外だった副次的な効果があった。

 それは、いつの間にか身についていた能力で、優真は相手からの殺気や敵意を敏感に感じとることができるようになっていた。そのうえ、集中力と状況判断力も日本にいた頃の優真とは比べものにならない程だった。

 そして、その新しい力は、見えない攻撃を聴覚だけで探り当てる程に優真を強くしていた。


 見えない攻撃を打ち落とすと、見えなくする効果がなくなっていた。その結果、攻撃してきた物の正体が明らかになった。

 打ち落としたのは短い矢だった。

 弓道とかで使う矢よりも短い。おそらく、前に見せてもらったボーガンの矢だと思った。


 しかし、深く考える時間を相手は与えてくれなかった。

 上から飛び降りてくる人影を見て優真は刀を構える。

 だが、その姿を見たことで優真は驚きの声を上げた。

「し……師匠!?」

 そこに立っていたの優真の師匠であり、元A級冒険者のハルマハラだった。

 ハルマハラは普段と違って殺気を纏っており、普段は優しい目付きが鋭くなっている。

 しかし、優真が声を発したことでハルマハラは襲撃者だと思い込んでいた存在が優真だったことに気付いて、構えていたレイピアを鞘におさめた。

「…………ユウマ君? ……良かった……無事だったんですね。私はてっきり連中が戻ってきたのかと……」

「……連中?」

 優真がその言葉を口にした瞬間、安堵していたハルマハラの顔に陰りが見えた。

 優真にはよくわからなかったが、家に誰もいなかったこともあり、とてつもなく嫌な予感がした。


「……こっちへ来なさい。ユウマ君は知る必要がありますから……」

 そう言ったハルマハラさんは、俺に背を向けて歩き始めた。


 ◆ ◆ ◆


 ハルマハラさんの向かっている先には、保育所や村長さんの家くらいしかなかったはずだ。

 そのどちらかに向かっているのか、それとも奥にある森へと向かっているのかはわからなかった。

 ハルマハラさんに何があったのかと何度聞いても、行けばわかるの一点張りだった。

 しかし、そこに着いたことで俺はすぐに理解した。

 平和な日常は、もう過去のことだということを。

 着いた保育所の庭には人影が一つしかなかった。


「…………ば……婆さん?」

 優真はそのよく見知った人影の方へと歩み寄ろうとしたが、そう呟いた途端、足を止めた。

 それは動かなくなった者にかけられた言葉だった。

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