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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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 特殊能力の概要を聞いたアルゼンは、顔をしかめた。

 それが事実であれ、はったりであれ、自分の攻撃を反らさせたことには変わりない。

「……面倒な……さっさと処理するか……」

 アルゼンはそう呟くと、動こうとしない万里華の姿を見る。

 へたりこんでいるのは恐怖を感じたからだと思ったが、どうやら違うみたいだった。

 どうやら緊張の糸が切れたから、へたりこんで動けない様子だった。

「どうして怯えないのです? もうすぐ殺されるというのに……」

 その質問は純粋な興味だった。

 答えようが答えまいがどっちでも構わない。どっちにしろ殺すのだから。

 そして、アルゼンが地面を蹴ったのと同時に万里華が口を開いた。

「わかってないなぁ……私は信じてるんだよ。優真が絶対に来てくれるってね」

 万里華がそう言った瞬間、アルゼンは強烈な殺気を感じた。

「松葉翡翠の断ち!!」

 その言葉が聞こえるのと同時に、付近の壁がアルゼンに襲いかかった。

 そして、万里華の前に一人の青年が立っていた。

 彼は、万里華に背を向けながら、愛刀を鞘に収める。

 そして、一言こう言った。

「悪い。遅くなった」

 その言葉に、万里華は少量の涙を流しながら、遅いよ、と笑顔で彼の背中に伝えた。


 ◆ ◆ ◆


 瓦礫の底から出てきたアルゼンは、優真を睨み付けていた。

 神々の都ことゴッドシティは、スタジアムのような重要施設や創世神の本拠を中心に、上級神の本拠、下級神の本拠という配置でドーナツ状に広がっている。

 要するに、下級神の位置付けにいる子どもを司る女神の本拠は優真達が居た場所からかなり離れていた。

 だからこそ、アルゼンは優真が来るまでにさっさと仕留めたかったのだ。

 それなのに、余計な邪魔ばかり入って目的を達成出来なかった。こうなった以上、取るべき選択は一つだけだった。


「俺の居ない間に随分荒らしてくれたね。確か……どっかの国みたいな名前の人だったよね?」

「アルゼンです。その節はどうも」

 怒りで乱れた心を落ち着かせ、アルゼンは軽く会釈をした。

「……やっぱり、お前はそっち側の人間だったって訳か……」

 その優真の言葉に、アルゼンは疑問を抱いた。

 彼の口振りでは、自分がこちらにいることを今知ったということなのだろう。にもかかわらず、彼は自分がこっちに居てもおかしくはないと思っている様子だった。

「私が国を裏切っていることを知っていたのですか?」

「……知っていた訳じゃないさ。ただ、疑問に思っただけ……」

「私は結構上手く演じていたはずーー」

「だって報告が早すぎるんだもん」

 その被せるような言葉に、アルゼンは顔をしかめた。

「あの時、何処かで爆発が起こった瞬間、部屋の中に居た俺達は何処で爆発が起こったのかわからなかった。なにせ音が聞こえただけだったからね。それなのに、お前はすぐに慌てた様子で正確な情報を伝えてきた。……おかしいだろ? あの城は特別な造りで俺達の居た部屋は大きな迷路の中心部にあった。にもかかわらず、情報伝達が数秒たらず……明らかに怪しいだろ?」

 その言葉に、アルゼンは何も答えない。

「ただ、あの時の時点では少し怪しいくらいで、偶然耳につけたインカムのようなもので情報を手に入れたのかもしれないと結論着いたし、連れてきた皆が心配でそれどころじゃなかった。明らかに怪しいって思ったのは、二つ目の違和感。迷宮通路に使用人が誰も居なかったこと。たった数分しか経っていないというのに、使用人全員が居ないというのは明らかにおかしかった。ましてや、大事な客人を放っておいて自分達だけ避難するとかあり得るか? あれはお前が目的を果たす為に、爆発が起こる前から避難場所近くに使用人達を誘導していたからだろ? 当然、余計な真似はしないようにするため、敢えて地下と王室付近に人を分けた……違うか?」

「……正直驚きました。……さすがは彼の息子といったところでしょうか?」

 手を顎において本気で感服しているような素振りを見せるアルゼンだったが、優真の表情には悔しいという感情が浮き出ていた。

「わかったところで防げなかったら何の意味もない。彼処で死んだのはホムラだけじゃない。国の為、家族の為にと戦った国民達……俺が守れなかったのはホムラだけじゃないんだよ。……今更過去が変わる訳じゃない……でも……それでも知りたい。お前達はなんで彼処を襲った?」 

 その言葉を聞いた瞬間、アルゼンは邪悪な笑みを浮かべた。

 その表情には、流石の優真も驚いたような顔を見せる。

 そして、アルゼンは懐に手を突っ込み、何かを取り出した。

「私達がチャイル皇国の城を攻めた理由はこの神器()です」

 それは、黒いオーラを放つ鍵だった。 


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