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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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 その姿に、ユリスティナは見覚えがあった。

 しかし、どこで会ったのかがわからない。それでも、どこかで見覚えがあるように思えた。

 その次の瞬間、腕を下に強く引っ張られた。

 肩辺りに痛みを感じて思考が乱れるものの、すぐに痛みどころではなくなる。

 彼女の綺麗な金髪が舞い上がると、飛んできた剣の軌道が彼女の髪を捉える。運良く先を微かに斬られた程度で済んだが、もしも腕を引っ張られていなければ、髪先ではなく自分の首が飛んでいたであろうことを早々に理解した。

 その現実を突きつけられたユリスティナは、顔を真っ青にさせていた。

「ユリお姉ちゃん大丈夫?」

 そう聞いたのは、不安そうな表情で聞くシェスカだった。その隣には、肩を震わせている赤髪の可愛らしい少年。彼は、ユリスティナの腕を握りながら、ユリスティナ以上に怯えていた。

「なにやっとるのじゃ! ここは危険じゃ!! はよぅ上に上がらんか!!」

 エパルの怒声で我に帰ったユリスティナは、イアロに小さい声でありがとうと伝えてから、立ち上がった。

 戦闘が起こっている方を見れば、ドルチェとファルナの攻撃をいなしながらも攻撃を放つアルゼンと、彼の剣を必死にナイフで防ぐホムラ、そして、全体のサポートをこなすエパルの姿が映った。

 しかし、スーチェだけは異様に体力を消耗しているのか、両膝と両手を床につけてきつそうにしていた。エパルが後手に回っているのは、そんなスーチェを守っているからだということが容易に想像できた。だからこそ、ユリスティナは自分がすべきことを探す。


 戦闘では役に立つことも出来ない足手纏い。

 家事も手伝うことしか出来ず、未だに一人では何も出来ない。

 夜の奉仕も年齢的な問題で許されない。

 唯一任されたのは、年の近い子ども達を見守るだけ。

 誰にでも出来ることかもしれない。それでも、今は自分がそれを任された。なら、自分が真っ先にやるべきことは自ずと見えてくる。

「撤退します!! ドルチェちゃんとファルナちゃんはスーチェちゃんを連れてきてください!! わたくしはシェスカちゃんとイアロちゃんを先に連れていきます!!」

 何よりもまず、子どもの安全を第一に考える。

 いくら、ドルチェとファルナが強くても、二人が子どもであることに代わりはない。

 だからこそ、彼女達も逃がさないといけないのだ。

 

 ユリスティナの声に戸惑うファルナとドルチェだったが、その僅かな隙を狙われる。しかし、寸でのところでアルゼンの位置は僅かにずれた。

 いや、正確にはドルチェとファルナの位置が先程より1メートル程後ろに下がっただけだ。

 それは、テレポートの効果によるものだった。

「ここは任せよ!! 妾がぬしらの退路は確保してやる!! 足手纏いなぬしらはさっさと失せよ!!」

 その言葉は力強く、一切の問答を許さないと言わんばかりの迫力を彼女達に与えた。

 ドルチェとファルナは、一瞬悔しそうに顔をしかめるも、すぐに優真の言葉を思い出した。

『敵を倒すことよりも、仲間を助ける為に力を使ってほしい』

 麒麟の空間から追い出されたあの日以来、何度も何度も自分達へ言い聞かせたその言葉が、彼女達の足を止め、目の色を変えた。

 二人はスーチェを支えると、部屋から出ていったユリスティナ達の後を追った。


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