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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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 子どもを司る女神の本拠内では、今日も楽しい笑い声が聞こえている。

 ユリスティナはいつも通り、子ども達と遊ぶように言われていた。しかし、今回はいつもと違っていた。

 今回はホムラが居るのだ。

 ホムラは、『救世の使徒』を率いていた頃から、幼い子どもとよく遊んでいた。

 皆を守らなくてはいけない。

 そんな心身共に疲労するほど気負っていた彼女に、アオイとキョウが提案したのが、幼い子ども達と触れあうことだった。

 それからの彼女は、時間が空く度に子どもと遊ぶようになっていった。

 そのお陰か、彼女は少し前に会ったとは思えないほど、ドルチェ達と仲良くなっていた。


「ねぇねぇユリ姉ちゃん! 今日はこのご本読んで~」

 ホムラやユリスティナを含めた8人は室内に居た。そんな中、シェスカは積み木で遊んでいるファルナ達から離れ、綺麗な姿勢で床に正座をしているユリスティナに絵本を読んでとせがみ始めた。

 それは、シェスカなりの気遣いだったのかもしれない。

 先程までは見守るユリスティナ以外の7人で遊んでいた。それは、仲間外れにしたからという訳ではなく、ユリスティナが離れて見守ることを選択したからだ。

 いつものように遊べば、皆がこっちに来ることは目に見えていた。だからこそ、ホムラにも皆と仲良くなってもらいたいが為に、ユリスティナは見守るという選択肢を取ったのだ。

 しかし、彼女も遊びたくないという訳ではない。

 屈託のない笑顔を向けるシェスカに、ユリスティナは笑顔で了承し、絵本を受けとる。

 それは、こちらの世界の言語になった地球の絵本だった。

 ユリスティナが絵本を受けとると、シェスカは何の了承もなく、ユリスティナの膝に乗り始めた。

 しかし、ユリスティナはそれを嫌がらない。それどころか、心の底から嬉しそうな笑顔をシェスカに向けていた。

 そして、ユリスティナは絵本を読み始めた。

 姉のように慕っている万里華に指導された読み方をシェスカ相手に実践してみる。

 声は子どもに聞こえるような大きさでハキハキと読み、登場人物によって声を出来るだけ変えてみる。抑揚と間隔を意識し、なるべく早口にならないよう心掛ける。

 案外簡単だな。と最初は思っていたが、子どもを相手に読むのと、一人で練習するのとでは全然違った。

 

 絵本のページが残り半分くらいになった辺りで、先程まで食いぎみで見ていたシェスカが、絵本から目を反らした。

「……シェスカちゃん?」

 それは唐突で、ユリスティナも違和感を覚えた。

 周りを見れば、寝ているスーチェの周りに積み木を重ねて遊んでいたファルナとドルチェが同じような反応を見せていた。

 そして、理由はすぐにわかった。

 ユリスティナが声を発した数秒後、何かが壊れるような音が聞こえてきた。


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