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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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55-8


 その人物が何者かなど、カリュアドスにはすぐにわかった。

 主神から聞かされたメイデン(仲間)を襲った敵。『霧裂(きりさき)』と神達に呼ばれている元人間の眷族筆頭、ネビアがそこに立っていた。

 ネビアもまた、彼の存在に気付いた。

「お久しぶりですね、カリュアドスさん。貴方がなぜこんなところにいるんですか?」

「それはこちらの台詞です。貴方は地獄に送られたのではなかったのですか? 地獄からどうやって……!!」

 話している最中にカリュアドスは気付いてしまった。

 彼が以前見かけた時のネビアではないということに……いや、姿形に関しては、彼そのもの。しかしながら、彼から神にしか発することの出来ない神威が微量ではあったが漏れ出ていた。

(……もしかしたら創造神様が動いて戦力を確保したのかもしれないと思っていましたが……この感じは、炎帝と似たような……)

 カリュアドスは僅かな時間で全てを理解した。

 カイザルクが見せた不可解な行動の意味とその目的。炎帝が見せていた余裕。破壊神に続いて起こった霧の女神の消失。そして、このタイミングで襲撃された理由の全てを、彼は理解した。


「……バラドゥーマ殿とネビア殿はそちら側につきましたか……」

 カリュアドスはそう答えながら、鎖が擦れる音を空間に響かせる神器メイテオールを手に握った。

「1対1では分が悪いと言わざるを得ませんが、援軍が来るまでの時間稼ぎくらいなら、私にもできるでしょう。……まぁ、命の保障はできませんがね……」

「ちょうどいい。貴女がいるってことはあの人形女と鉄の女神もいるってことだな? 二柱まとめて消してやりますよ」

 その言葉を皮切りに二人の戦闘は幕を開けた。


 ◆ ◆ ◆


 トキネはどうすべきか迷っていた。

 自分が絶対に敵わないと思っていた存在が殺されたという事実は、彼女に絶望を与えた。

 憧れの存在まで殺された。全て灰となり、遺体すら残らなかったという。部屋に籠っていたせいで、最期の勇姿すら見れなかった。

「……なんで私ってこんなところにいるのかなぁ……」

 トキネは部屋のベッドで三角座りをしながら、そう呟いた。


 彼女は2次元好きの中学生だった。

 ゲームやアニメの世界に憧れ、いつかは自分も完璧で蕭洒なこのメイド長みたいになりたいと思っていた。

 しかし、夏コミに行く道中、通り魔に刺された。

 あのメイド長みたいに時を止められていたら、こんなことにはならなかっただろうに……そう思いながら彼女は死んだ。

 そして目が覚めた時、彼女は新しい世界にいた。


「……はぁ……あそこでパルシアスさんに会わなかったらこんな思いせずに済んだのかなぁ……」

 トキネが昔のことを思い出していると、急に悪寒が自分を襲った。過去に感じたことがない悪寒に、トキネはベッドから降りる。

「なに……今の?」

 普段ならメイド服に着替えるのだが、それを忘れて寝間着姿で部屋から出てしまうほど、彼女は戸惑っていた。

 すると、こちらに駆け寄ってくる人影が見えた。それは、彼女が普段お世話になっている天使だった。

「どうかしたんですか?」

 慌てる天使にそう聞くと、天使は緊迫感のある表情でトキネの肩を掴んだ。

「や……奴らが……炎帝が攻めこんできて……」

 その名を聞いた瞬間、トキネに緊張が走った。


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