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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
55章:実習生、大切な存在を護るために戦う
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55-7


 大地を司る女神。世界で最も信仰者数が多いと言われている彼女は今、机に突っ伏していた。

 全てにやる気を見出だせないとでも言いたげな彼女の姿を見ても、おそらく信仰者の半数以上は彼女が神ではないと主張するのだろう。

 それほどまでに、彼女は落ち込んでいた。

「……我のお気に入りを貸そうか?」

「…………大丈夫……」

 そう短く答えた大地の女神を見て、鉄の女神はため息を吐きながらあっそと適当に返事をしてから再び本に目を戻した。


 鉄の女神がここに居る理由は、子どもを司る女神の実母にあたる大地の女神に昨日の話をしようとしていたからだ。しかし、彼女は既に全てを聞いていた為、こうして日がな一日、読書に耽っていた。


「そんなに辞めてほしくないのであれば直接言えばよいではないか。貴女の言葉ならこーちゃんも耳を傾けーー」

 鉄の女神がそこまで言うと、いきなり雰囲気が変わった女神達の視線がある一点に注がれた。 

「これって……」

「どうやら招かれざるお客が来たみたいだね」

 その言葉が、そこにいる他の二人に緊張感をもたらした。

 一人は大地の女神の新しき眷族筆頭、怪我が完治したメルホルン。

「とても厄介なお客なのですね。私としては、是非とも遠慮したい相手なのですが……」

 そう言いながら立ち上がった銀髪の男性。彼は、主神の方に顔だけを向ける。

「少し席を外させてもらいますね」

 笑顔を見せる彼に、鉄の女神は手を振りながら「よろしく~」と暢気な声で送り出そうとしていた。

 それは一種の信頼。彼は絶対帰ってくると主神は信じているのだと感じたメルホルンは勢いよく立ち上がった。

「あたしも行かせてください!」

 大地の女神に向かってそう言ったメルホルン。しかし、それに答えたのは大地の女神ではなかった。

「貴女が来ても邪魔なだけです。ここでおとなしくしていてください」

 そう答えたのはカリュアドスだった。

 彼はそれだけ言うと、部屋を出ていった。


 ◆ ◆ ◆


 カリュアドスは迷いなく廊下を歩き、やがて目的地と思われる場所に辿り着いた。

 そこは白い霧に包まれた空間だった。

「おやおや、これはまた……面倒なことをしてくれましたね」

 その現象を見ていたカリュアドスの言葉は少し軽い口調ではあったものの、その目は真剣そのものだった。

 次の瞬間、カリュアドスの前に銀色の円盤が出現した。

 なんの前触れもなく出現したその円盤は、勢いよく噴射されたかのような霧からカリュアドスを守った。

「……これは笑えない冗談ですね……」

 そう呟いたカリュアドスの視界には、既に銀色の円盤は存在しない。

 その代わりに現れたのは白髪の青年だった。


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