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そこは、先日ホムラと再会した建物だった。
しかし、今回開かれるのは、上級神達による会議ではない。
去年までファミルアーテだった者達による対策会議。それがここで開かれるのだった。
元ファミルアーテ第3位だったハナさんは当然として、その他にも、多くのファミルアーテと呼ばれる存在がここに集まっている。
ちなみにメイデンさんは呼ばれていないが、彼女の圧に耐えられなくて渋々許可を出した。
俺のメイドとして俺を守ると意気込んでいるらしい。それもこれも、女神様が面白半分で許可を出さなければ……まぁ、今更過ぎたことを言っても仕方ないか。
「……それじゃあ……行くよ?」
優真は扉に手をかけながら、後ろの二人に確認を取った。二人は優真の言葉に小さく頷く。
優真は小さく呼吸をしてから、扉を開いた。
そこは神聖な雰囲気に包まれた場所だった。
内装は大きな円卓とその周りにある厳かな椅子。飾り気はないだろうが、座り心地は良さそうだった。
しかし、優真が真っ先に感じたのは、新入りに向けられた圧力だった。
第10位の席に座っているのは、雷を司る男神の眷族筆頭、ライと呼ばれている青年。
第9位の席に座っているのは、月を司る女神の眷族筆頭、ルナと呼ばれている少女。
第8位の席に座っているのは、太陽神の眷族筆頭、アポロと呼ばれている男性。
第7位の席は空席。
第6位の席に座っているのは、海洋神の眷族筆頭、マリンと呼ばれている少女。
第5位の席に座っているのは、幻想と夢を司る女神の眷族筆頭、イルジョネアと呼ばれている女性。
第4位の席は空席。
第3位の席には、優真の隣にいたハナが座った。
第2位の席には、何故か創造神の眷族筆頭、キュロスと呼ばれている男が座っていた。
そして、最後の一つ、本来であればキュロスが座っていたであろう席。第1位の席に、優真は座らされた。
その背後に、メイデンが控えるように立ち始めた。
これにより、対策会議最後のメンバーを待つ雰囲気になるが、そんななか、第10位の席に座っている男が手を挙げた。
「一つ良いか?」
それは、優真の隣に座っているキュロスに向けられた質問だったが、彼は目で了承するかどうかの決定権を優真に促した。
「え? もしかして俺が進行すんの? ……初めてでなんもわかんないし、極力キュロスさんとかに進めてもらいたいんですけど……」
頬をかきながらそんなことを言い始めた優真を、キュロスは一瞥し、ライの方へと顔を向けた。
「言ってみろ」
「ありがとうございます」
キュロスに向かって軽く頭を下げると、ライは立ち上がり優真の方に顔を向けた。
「ファミルアーテ元第10位のライです。雨宮優真殿、ここは選ばれた者のみが入室を許された神聖な場所です。いくら創造神様に認められたとはいえ、勝手は許されない。即刻彼女に退室していただきたい」
ライは指をさす。その先に居たのは、メイデンであった。




