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10-2

 スティルマ大森林を抜けるのにかかった時間は三十分、それほど遅くはないが、速いとも言えなかった。普段はモンスターと必ず遭遇するため、短い距離でも一時間以上かかるのだがそれに比べれば確かに短いとも言えた。だが、警戒を怠らないよう慎重に走った結果、少し時間がかかってしまった。

 だがお香の効果もあったからか、道中は結局、モンスターにも人間にも出会わなかった。

 帰る途中、女神様に質問してみたのだが、返事は返ってこなかった。単に寝ているだけか、それとも音信不通なのか。

 まぁ、毎回答えてくれる訳でもないのだが、そういう時は助手っぽい立場のミハエラさんがなにかしら答えてくれるのに、それすらもなかった。

 その普段とは違うことが俺の不安を煽っていく。

 どんどん嫌な予感が増していく。


 ◆ ◆ ◆


 村に入ると、そこには誰もいなかった。

 外に出ている村人は誰一人としていなかった。

 まだ朝の6時少し前だ。

 老人連中なら起きていてもおかしくないだろうに、誰も見当たらないのはさすがにおかしかった。


 ……シルヴィなら、きっと家にいる!

 そんな確信とは言えない希望にすがり、彼女の無事な姿を見るために、俺は彼女の家に向かった。


「シルヴィ! 無事かっ!」

 勢い良く扉を開ける。真っ暗だった。明かりもついていない。

 靴を脱ぎ捨て廊下を駆け、台所に着いて彼女を探す。

 料理をしている彼女が「おかえりなさい」と言ってくれることを願っていた。だが、その願いは叶わなかった。


「……お姉ちゃんどこ行ったの?」

 おんぶしていたシェスカがそう呟いたのが聞こえてきた。

 それは俺が一番聞きたいことだった。

「……一応、他の部屋も探してみるか……シェスカも一緒に探してくれるか?」

「……うん」

 シェスカはしゃがんだ俺の背中から降りると二階の部屋を探しに行った。

 俺は一階を捜索するも、何の成果も得られなかった。


「お~い、シェスカ~、二人ともいたか?」

「ううん、いないよ~」

「俺は保育所の方に行って探してみるから、シェスカはこの家の探索を続けていてくれないか?」

「わかった~」

 階下から言った俺の言葉に、二階にいるシェスカがそう言ったのを見て、俺は保育所へと向かおうとした。


 しかし、家の玄関を出た俺は時が止まるのを感じた。

 この数ヶ月で何度も感じた感覚『何かに襲われた』時に発動する【勇気】が強制的に発動したのだ。

 しかし、攻撃している人物はどこにも見えなかった。それどころか何で攻撃されているのかもわからなかった。


 姿が見えない時は幾度かあった。

 しかし、そういう場合は、毎回タッチパネルからどういった攻撃を受けるのかミハエラさんが教えてくれる。

 それなのに、タッチパネルはうんともすんとも言わなかった。

「くそっ! いったいどうなってんだよ!!」

 この状況に優真は不満をぶちまけることしかできなかった。

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