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多くの生物がその部屋にはいた。
真っ白な空間ではあったが、モンスターと呼ばれる人を捕食する生物や、人と共存する道を選んだ動物といった多種多様の生物達がそこかしこにいるせいで、色合いは豊かだった。
そんな生物達の中に、一際目立つ存在がいた。
白い髪の美女。
白い衣を身に纏うその女性は、モンスターや動物達に囲まれていた。
しかし、人を襲うはずのモンスターは彼女を襲わない。それどころか、S級と呼ばれるモンスターですら、彼女に服従しているようにも見えた。
そんな状況の中、囲まれている女性の表情はどこか寂しそうにも見えた。
長年自分と暮らしてきた家族がたった1日で自分の元から居なくなった。しかし、その弔いも非がこちらにあるため、許されない。
言い知れぬ喪失感のせいで、日がな一日こうしてペットと戯れることしかできなくなっていた。
「……創造神様……きっと怒っているわよね……」
女性は呟く。
上級神以上は全員召集の神託がくだったというのに、とある女神に会いたくないという理由だけで、彼女は行かなかった。
「……もしかしたら、こんな駄目な私を追放して、あの子を後釜に据えるつもりだったのかも……」
彼女がため息混じりにそんなネガティブなことを呟いた時だった。
急に周囲のモンスター達がざわつき出した。
少し遅れて動物達も慌てるようにそこかしこを駆け回る。
そのただ事ではないとわかる状況に、彼女もようやく気付いた。しかし、それは扉が開かれるのと同時だった。
「…………な……なんで……?」
彼女はそこに現れた人物の姿を見て、目を見開き、その言葉を発した。彼女は明らかに動揺している。
それもそうだろう。
彼女の前に現れたのは、黒いローブを身に纏った白髪の青年。地獄に入れられていた筈のネビアであった。
「お久しぶりです、我が愛しき女神様……」
彼は目尻に涙を浮かべながら、そう言った。
「貴女にまた会いたくて、地獄の底より舞い戻って参りました」
一瞬で目の前まで現れたネビアは、霧の女神の手を取り、手の甲にそっと口づけをし、彼女に恍惚の笑みを浮かべながら、そう言った。
「な……なんでここにいるの?」
「何故、と言われましても……ここが私の家ですから。いやはや、苦労しましたよ。復讐に動いて目が覚めたら地獄でしたからね。私は無実だと主張しても、中々出してもらえませんでしたし、早く無実を説いて女神様の元に帰らねば『神々の余興』に間に合わなくなってしまう。そう考えていた私の元に親切な御仁が現れ、私をあそこから解放してくださったのです!」
幸せそうに語るネビアだったが、その瞳からは狂気の色が伺えた。




