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子どもを司る女神の言葉に誰も何も言えないなか、万里華がポツリと呟く。
「じゃあ、私達はどうなるっていうんですか……」
辛そうな表情で呟いたその言葉を、子どもを司る女神は聞き逃さなかった。
「私は別に死んだって訳じゃないからな。時空神様と麒麟様の協力もあって、後釜が見つかるまでは君達の神でいられるよ。自分勝手な神で申し訳ないけどね」
「……何を今更……」
優真のボソッと呟かれた嫌味に、子どもを司る女神は小さく笑う。だが、その表情はどことなく儚げな様子だった。
「だが後釜なんて誰もやりたがらないんじゃないのか?」
「どういうことです?」
鉄の女神が放った言葉に疑問を抱いたシルヴィが尋ねる。
「神の座を引き継ぐとなると、幻想と夢を司る女神のように、二つを司ることになる。それって結構負担がでかいんだ。しかも、今回の騒ぎで下級神達は今、自分の眷族が自分を殺して力を手に入れようとするかもしれないって気が気じゃない。要するに、私のような下級神達にもう一つを背負う余裕なんてない。ましてや、キュロスに勝つような化け物が何の信仰心もなく傘下に入るんだ。おそらく上級神ですら誰も手を上げなかったんじゃないのか?」
「ご明察。だから、今もこうして神を続けていられるのさ」
鉄の女神の言葉に子どもを司る女神は苦笑しながらそう答えた。
「多分、大地の女神様は内心優真君達を受け入れてもいいとは思ってるんだろうね。麒麟様も優真君に協力するくらいだから、悪くは思ってないんじゃないかな。でも、両方とも君に子どもを司る女神を辞めてもらいたくないから直前まで声を上げるつもりはない……ってところかな?」
「多分ね。麒麟様は退室した私に似たようなこと言ってきてたし……だから、本当に悪いとは思ってるよ。私なんかの為に協力してくれたのに、私の勝手な判断でそれを無駄にするんだからね」
「でもまぁ、君に同情していた麒麟様や時空神様は大丈夫だろうけど、破壊神様が今回の件を聞いたら……さすがに怒るんじゃないのか?」
「……それが一番怖いんだよね……」
子どもを司る女神の表情は、鉄の女神の言葉を聞いた瞬間、本気で困っているようにも見えた。それはまるで、先生にばれたらどうしようと怯える子どものようにも見えた。
しかし、そのタイミングで再び扉が開け放たれる。
そこから現れたのは、普段とは異なる様子のミハエラだった。




