53-11
優真は暗くなった夜道を一人で帰っていた。
パーティーの準備をすると言った彼女達の言葉が優真をわくわくさせ、早く帰ろうと足が早まる。
そんな優真の目が急に鋭く光る。
優真が振り返った先には、一人の人物が立っていた。
黒いローブに身を纏った者。優真は本拠に向けていた足をそちらへと向ける。
すると、フードで顔を隠しているその人物は何処かへ走りだし、すぐに優真もその人物を追いかけ始めた。
追いかけ続けて数分が経過すると、急に黒ローブの男が足を止めて振り返ってきた。
優真もまた、一定距離を保ちながら足を止める。
(……ここって……どこだ?)
見覚えのない場所だった為、優真が周りに視線を送った瞬間、目の前の男がフードを取り始めた。
それは、優真がよく知っている人物だった。
「……っ! ……父さん……」
十中八九そうだとわかっていても、それでもそう簡単に受け入れられないものがあった。
「大きくなったな、優真」
辛そうな表情を見せる優真に、炎帝こと雨宮優雅は優しい微笑みを見せながらそう言った。
「背も伸びたんじゃないか? 前はこんなに小さくて、父さんがおらんとなんもできんかったというのにな~」
「…………」
「がたいも良くなった……小児喘息でよく入院していたお前が、ここまで大きくなってくれて……父さん……嬉しいよ」
「…………なんで」
「……ん?」
「なんであんなことしたんだ!! なんでよりによって父さんなんだ!! 父さんがあんなことしたから! 俺は父さんと戦わなくちゃいけないんだぞ!」
「……優真……」
「せっかく会えたのに……もう……絶対に会えないと思ってたのに……こんなところでなにやってんだよ!!!」
優真の目から涙がこぼれ落ちる。そんな優真を、優雅は悲しげな眼差しで見た。
「優真……父さんと一緒に来んか?」
そう聞かれた瞬間、優真は目を見開いた。
「それって……」
「父さんだって、優真と戦いたくなんてない。だから来い。一緒に連れてきたい人がいるのなら遠慮するな。だからーー」
「断る!!」
その言葉は即答で、優雅は一瞬、神の意思が反映されているのではないかと疑うが、優雅の目には優真が本心でそう言っているようにしか見えなかった。
「父さん、俺は父さんのやり方が間違っていると言えるような立場じゃない。でも、パルシアスを殺したり、他の眷族を殺したりするその方法が正しいとは思わない。この世界に来て、どんなことが起こったのかは知らないけど、俺にも護るべきものがいっぱい出来たんだ……だから、父さんの方に行くことは出来ない……」
「……そうか……なら、次会う時は敵として……だな」
優雅は辛そうにそう言うと、炎となってこの場から消えた。
それを見ていた優真の手からは、強く握りしめたことで血が滴っていた。




