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ようやく落ち着いた優真達は、ホムラとの再会に喜んだ。
嘆かわしい状況が未だに終わりを迎えた訳ではない。
やらねばならないことは数多く存在する。それでも今日この時だけは、怒った顔も、辛そうな顔も、何かに嘆く顔も、この場には存在しなかった。
ホムラという少女は、子どもを司る女神の眷族として生き返った。
その事実が、辛く苦しい状況に陥っていた彼らに笑顔をもたらしたのだ。
「じゃあ今日はホムラちゃんが帰ってきたんだからご馳走にしないとね!」
万里華がそう言った瞬間、シルヴィが嬉しそうに手を合わせた。
「いいですね! 色々あってメイデンさんのぶんも出来ていませんでしたし、今日はパーティー風にしてみませんか?」
「じゃあしっかりとドレスアップしないとね~」
「……ドレス……持ってない……」
万里華の提案にメイデンが少し残念そうに答える。
「わ……私も! そもそも服どころか着るもんがねぇ!」
メイデンに賛同するかのように、簡易的な服しか身に纏っていないホムラがそう答えるものの、ユリスティナが間にわって入る。
「安心してください! メイデン様とホムラ様はわたくしと体格が結構似ていますから、わたくしのドレスをお貸ししますわ!」
自信満々に胸をはって答えるユリスティナ。
「じゃあ決まりだ! メイデンちゃん! ホムラちゃんを本拠に連れてくから手伝って!!」
「……了解」
メイデンはそう言うと、慌てるホムラの腰を担いで、万里華やユリスティナと共に部屋から出ていった。
残ったハナとシルヴィがこっちを見てくる。
「では、ユーマさんも帰りましょう」
シルヴィがこちらに向かってそう言ってきたため、俺は首を横に振った。その対応に戸惑った表情を二人は見せた。
「悪いけど、少し女神様と話をしてから帰るよ。ハナさん、シルヴィ達を頼んだよ」
「おっけ、任せてよ」
ハナさんはそう言うと、シルヴィの手を引いて部屋から出ていった。
残ったのは、女神様と彼女の背後に佇むミハエラさんだけ。
「……どういう方法をとったのかは知らないけどさ。これだけは言わせてもらうよ……ありがとう」
子どもを司る女神に向かって、微笑みながら感謝の言葉を伝えた優真は、部屋から出ようとした。
「ちょっと待って!」
そんな彼を女神が後ろから呼び止める。
優真が振り向くと、彼女はすぐ近くまで来ていた。
「私は自分の取った行動を後悔していないよ。優真君、君が私の眷族としてこの世界に来てくれたから、私はお父様と向き合えた。本当にありがとう。彼女達のことはよろしく頼んだよ」
女神はそう言うと、ミハエラを連れて部屋を出ていった。




