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「…………本当か?」
「もちろんだ! 私の配下ではなく、私の仲間として私に協力して欲しい。君の望みは最大限叶えられるように譲歩するし、破壊神の力は君が喰らえばいい。……どうだろう? 君にとって悪くない話だと思うんだが……」
その提案に、破壊神が何かを言っているが、バラドゥーマの耳には入らない。そして、少しの間が空き、バラドゥーマは口を開いた。
「……キュロスは俺の獲物だ」
「交渉成立!」
白髪の青年が楽しそうに言い放った瞬間、今まで燃え続けていた炎の壁が、一瞬で鎮火した。
そして、三人の目に、怒りを露にした破壊神の姿が映る。
「……残念だよ、炎帝君。余興がせっかく面白くなってきたというのにあんな真似をして……我の楽しみを壊してくれたんだ。生きてここから出られるとは思わんことだ」
その威圧的な言葉に三人は怯んだ様子を見せない。
「神が我々の命を弄ぶ時代は終わりを告げる。最終戦争の始まりは、私が炎を司る男神の力を食らったあの日でも、私がパルシアスとの戦いに勝利し、革命を宣言したあの日でもない! 全ては今日! 始まる!! 創世神の一角を落とすこの日に、神々の時代は終わりを告げる!!」
そして、戦いは再び始まった。
◆ ◆ ◆
優真達は広い部屋で待機していた。
彼らがいるそこは、子どもを司る女神の本拠ではない。
基本的に上級神以上の存在にしか立ち入ることが許されず、また、眷族ではファミルアーテのみが使用することが許された神聖な施設であった。
子ども達は、女神様の指示で本拠内に留守番し、それ以外のメンバーがここにいる。
その中には、先日倒れたメイデンの姿もあり、彼女ですら、どこか緊張しているように見えた。
ただ、彼らの主神、子どもを司る女神だけはこの場にいなかった。
そして、優真が見続けていた扉がゆっくりと開き、そこに立っていた子どもを司る女神は、左目を前髪で隠している赤髪の少女を引き連れて、中に入ってきた。
◆ ◆ ◆
子どもを司る女神は高鳴る鼓動を落ち着かせるので精一杯だった。
目の前にいるのは、上級神の面々。三つの仰々しい椅子の内、二つは既に埋まっており、他の席は三つを除いて既に埋まっている。
一つは、天候を司る上級神の内の一柱、霧を司る女神であった。彼女は、優真達と色々あったことが公に知られている為、この場には自己判断で来る来ないを選択させられていた。時間になっても現れないということは、そういうことなのだろう。




