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52-10


 世界には絶対に犯してはならぬ禁忌というものが存在する。

 例え、どんなに悪事を働こうが、どんなに真面目に働こうが、それを犯せば等しく罪。

 決してどんなことをしても許されぬ罪。

 決してどんな理由があっても許してはならぬ罪。

 犯すことは不可能と言われていた罪。

 それを炎帝は犯したのだ。


 スタジアム全体がどよめきを見せる。

 その中でも神々が取った行動は一つ。侮蔑と恐怖の眼差しを炎帝と呼ばれる存在に向けることだけ。

 今見せた炎は、先程クレエラがもたらした情報が本当であることの証明。

 炎帝は犯すことの許されない、いや、本来であれば犯すことが出来ない筈の大罪を犯した。

「……神喰らい」

 観客席の誰かがその言葉を口にする。

 それを知っている者は全員が脳裏を過ったであろう大罪の名。

 しかし、数ヶ月前に眷族になった彼は知らない。

「なぁ師匠、神喰らいってなんなんすか?」

 その言葉に顔を強張らせていたカリュアドスは重々しく口を開く。

「……『神喰らい(かみぐらい)』、それは口にするのも憚られる大罪です。神に認められ、神のごとき力を行使できる『王の領域』とは違い、神を殺し、神の力を取り入れることで強制的に神格となれる方法。以前、一度だけその方法を行う者がおり、その際、地上にいる生物の8割が死滅し、多くの眷族や天使にもかなりの被害が出たという話です」

 その内容は誇張しているのではないかと疑いたくなるほど、信じられないものだった。しかし、カリュアドスは無意味な嘘を吐く性格ではない。また、その言葉や表情からは嘘を言っているようには思えない。

「得られる代償は確かに大きい。だが、神に反乱など普通は考えないし、そもそも神に勝つということ自体があり得ない。……とはいえ、目の前で起こっていることは事実。しかも、前回は下級神でしたが今回は上級神……どうなるかなんて想像がつきません」

 いや、本当はカリュアドスにもわかっていた。

 下級神の時であれほどの被害をもたらしたのだ。もし、数千年前と同じ結末になった時、地上の生物はおろか、この世界全てが無に帰す可能性がある。

 それは絶対に回避すべき運命だった。


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